世界的にインフレの足音が聞こえてくる中、2022年の主要な中央銀行の金融政策はどうなるか。特集『総予測2022』の本稿では、日米欧の中銀の動向について分析した。FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げに踏み切ることは確実。ECBと日銀は利上げに踏み切ることはなさそうだ。(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
パウエルFRB議長がテーパリング
加速を明示した理由
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が2021年11月30日の議会証言で、量的緩和のテーパリング(債券購入縮小)の加速を明示した理由は、次のように考えられる。
第一に、11月下旬にバイデン米大統領がFRB議長再任をパウエル氏に伝えた際、インフレ対策を重視してほしいと伝えた可能性がある。支持率低下に悩む政権にとって物価高騰は危険だからだ。
第二に、FRB自身、従来の「インフレは一時的」という説明に無理が来ていると思い始めていた。最も誤算だったのは、失業者が仕事に戻るペースが遅い点だ。
政府の特別失業給付金が巨額だったことに加え、新型コロナウイルス感染症で身内、友人を失った人々は、家族と長く過ごせる仕事を望んで再就職に時間をかけており、それらのことが人手不足を長引かせている。
テーパリング完了時期を従来の22年6月中旬から仮に22年3月中旬に前倒しするなら、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)以降いつでも利上げが可能になる。となると、利上げ開始時期の一つの候補が見えてくる。