河野太郎・自由民主党広報本部長は、9月の総裁選挙時に年金制度改革案を提起した。特集『総予測2022』の本稿では、年金制度のエキスパートである西沢和彦・日本総研主席研究員と共にあるべき年金制度について議論してもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
年金額を実質的に減らして制度は持続も
老後を保障しているわけではない
――河野さんは自由民主党総裁選挙で消費税を基礎年金の財源に充て、最低限の年金を保障する案を提起しました。なぜ取り上げようと考えたのですか。
河野 選挙の前後の世論調査を見ると、景気対策が一番の関心事。2番目が年金を含む社会保障です。
総裁選で年金の議論をすることが自民党にとってプラスになると思っていましたが、誤算が二つありました。
時折一部で見られる「年金は心配ないから、変に不安をあおっては駄目だ」といった発言が出てきたこと。そして、年金制度に対する理解不足からかメディアが「消費税は何パーセントになるのか」という点に拘泥してしまったことです。
私が首相になったら年金を議論のテーブルに載せますということを言っておいたことはよかったと思っています。
西沢 持続可能な年金制度の議論をしていくと、年金の受取額を減らす、消費税率を引き上げるといった国民受けの悪い議論もしていかなくてはいけません。
河野 人口構成が逆ピラミッド形なのに、年金制度を賦課方式(ダイヤモンド編集部注:現役世代の保険料で現在時点の高齢者への給付を賄う方式)のままで維持できるのか疑問に思っている人は多くいます。
厚生労働省は「年金制度は大丈夫です」と言っていますが、それは年金額を実質的に減らしていくので制度は持続するという意味にすぎません。老後生活を保障しているわけではないのです。
――河野さんはいつから年金問題に関心を持っていたのですか。
河野 1996年に初当選して、97年にこのままでは年金制度は持続可能ではないという提言を出しました。そこから25年間です。
西沢 2008年には河野さんや野田毅さん、亀井善太郎さんと当時の民主党有志の方との共同で、今回の案に近い年金の提言を出しました。それ以降、国民に痛みの伴う話に正面から向き合う動きは政治の中にほとんどありません。
――消費税を税源にした基礎年金を導入するメリットを知らない人は少なくないと思います。メリットを教えてください。