「寝そべり族」を選ぶ若者
働く人にとって冬の時代に

 先述の友人には、その後上海にある介護事業を展開する企業を紹介したが、中国では今、何百万人、何千万人という人が彼のような状況に陥っていることが想像できる。中国国家統計局が昨年発表した統計によると、20年6月の時点で、専門学校や大学を卒業した若者(20歳~24歳)における失業率は19.3%に上る。

 また、若者においては、厳しい就職環境の中で、生活のために、高学歴でも需要が拡大しているデリバリー産業に従事する人が増えている。その一方で、ゆっくり仕事を探そうという「スロー就活」を志向する人もおり、親のすねをかじったり引きこもりになってしまったりするケースも少なくない。豊かさの中で親に大事に育てられてきた若い世代は、忍耐強く苦労することができないという傾向も指摘できる。

 積極的に競争に参加せず、最低限の生活をすることを志す「タン平主義」(寝そべり)も一つのライフスタイルとして選択することをいとわない(詳しくは『中国の過酷な受験戦争を勝ち抜いた若者が「寝そべり族」になってしまう理由』参照)。

 こういう時代だからこそ、安泰とされる公務員を希望する人が増えているのだ。

 ただ、ここに来て、その公務員すら、それほど「安全・安心」とはいえなくなってきている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、休み返上で働かされるなど、民間企業より忙しいケースも少なくない。さらに、地方政府では財政悪化により、減給が始まっている。就職難、そしてその後の人生設計の不透明さは深刻さを増すばかりだ。

 中国では近年、毎年のように「今年はこれまでの10年で一番悪い年だが、これからの10年では一番良い年かもしれない」といわれている。これが現実になる可能性も決して小さくはない。