気象の予算は20年間で
120億円も減少している!

 年々重要性が増している気象予報だが、実は気象庁の予算はこの20年で約120億円も減っている。

 現在、年間予算は600億円前後で、国全体の予算の0.1%程度。単純に日本の人口で割ると国民1人当たり500円弱で、喫茶店で飲むコーヒー1杯とほぼ同じ値段であることから「コーヒー予算」とも呼ばれているらしい。

「減らしちゃいけないですよね。気象情報の需要自体は増えているのに、予算は何か災害が起きないと付かない。

 気象庁は予算減を補うために人を減らし、ホームページに広告を掲載したりしていますが、もっとやるべきことがあるだろうという気はしています」

 ちなみに、減らされた120億円の予算があったとしたら、斉田さんはどのようなことに使うのだろうか。

「気象衛星1基の値段が400億円ぐらいなので、120億円では大した設備投資はできませんね。なので、まずは人を増やしたいです。

 今は少ない人数で仕事に追われ、それこそ目の前のことをやるのに手いっぱいな状態の人が多いようです。私は、先を見通して何かをやるってことが大事だと思うんですよ。

 予測する機関なのですから、5年後、10年後、20年後にどういうことができるか。先を見越して何かをやるためには、ある程度時間的な余裕が必要です。だから120億円あったらもうちょっと人を増やして、余裕を持った仕事ができるようにしたいですね」

 宇宙までも視野に入れた壮大なスケールの気象の世界。必要なのは一にも二にもハイテク機器だと想像していたが、「まずは人」という言葉が意外であると同時に、やけに合点がいった。

斉田季実治(さいた・きみはる)
気象予報士/気象キャスター(「NHK総合 ニュースウオッチ9」午後9時~10時)
1975年生まれ。北海道大学で海洋気象学を専攻し、在学中に気象予報士資格を取得。防災士。危機管理士1級。星空案内人。JLA認定ライフセーバー。日本気象学会会員。日本災害情報学会会員。日本危機管理防災学会会員。宇宙天気ユーザー協議会アウトリーチ分科会会長。
著書に『新・いのちを守る気象情報』(NHK出版新書)、『知識ゼロからの異常気象入門』(幻冬舎)、監修に『天気のふしぎえほん』(PHP研究所)がある。