米国のブラックフライデーで異変
小売店が激安品を用意しなかったワケ

 消費大国アメリカでは日本以上に小売店の品不足が深刻になっています。GDPの7割が個人消費だというお国柄ですから、アメリカ人は日本人以上にリベンジ消費に熱を入れています。しかし、今年の夏以降、アメリカではコロナ禍からの回復期に入ったのにとにかく小売店の店頭で品切れが目立っているのです。

 そんな中、今年のブラックフライデーのある動きが注目を集めました。アメリカでは感謝祭の翌日の金曜日をブラックフライデーといって、一年で一番多く商品が売れる日だとされています。大手の小売店はどこでもブラックフライデーに向けて激安商品を揃えて消費者を迎え入れるのが通例でした。

 ところが、今年はブラックフライデーなのにそういった激安品を用意しない小売店が目立ったのです。例年ならば40~50%オフの商品が並ぶショッピングモールであっても、多くのブランドショップが10%オフの商品しか用意をしない。それで消費者は、「まったく期待外れだよ」と楽しみが感じられないブラックフライデーの様子を嘆いたのです。

 この現象と、今回日本マクドナルドが発表したポテトの販売休止のニュースの共通点、お気づきでしょうか?

 これは、「たとえ一時的に顧客が不満足であっても、機会損失を避けるほうが品切れよりもずっといい」ということなのです。

 アメリカではブラックフライデーの後、クリスマス商戦が続きます。世界的なサプライチェーンが混乱して、中国など海外で生産した商品の輸入が滞る中で、ブラックフライデーで仮にたくさんの商品が売れたとしても、その後、クリスマス商戦の間中、ブランドショップの店頭で陳列棚がガラガラになってしまったら多大な機会損失が発生します。

 ポテトも同じです。もちろんマクドナルドに来店してバーガー類だけを買って帰る顧客もいるわけですが、「バリューセット」がなければ他のお店を選ぶという顧客も少なからずいるはずです。ですから商品の販売量を一時的に絞ることで、サプライチェーンが滞っていてもセット商品の営業を続けられるようにしているわけです。

 でも、冒頭でお話しした私の友人のように、ポテトSを大量に買う顧客が出てきたらどうするのでしょう?