投資において「複利の力」ということが重要だというのはよく言われることだが、これは投資に限らず、事業においても全く同じことである。企業がもうけた利益を使わず(配分せず)さらなる成長を求めて投資をするからこそ利益の拡大が見込める、これこそがまさに複利の力なのである。

 古今東西を振り返ってみても成長段階にある企業はそれほど配当を多くは出していない。それよりも再投資した方が最終的には株主の利益になるからだ。

 ところが、企業が成長する事業に投資できないというのであれば、もうけた利益は内部に現金としてため込むのではなく、株主に還元をした方がいい、それが配当なのである。つまり高い配当を出している企業というのは、もうかる事業に投資できないから高配当しているともいえるのだ。

 したがって、既に十分な金融資産を保有する人が自分の資産を守るために、あるいはその資産から生み出す安定的な収益を手にしたいということであれば高配当株を保有するのも悪くはないだろう。

 でも資産形成を目的にするのであれば、配当の多寡以上に利益の成長を基軸として投資をすべきである。ましてや株主優待というのはあくまでも「おまけ」にすぎないのだから、配当と同様にある程度の資産を持つ人が楽しみに保有するならともかく、長期に資産形成を目指す人にとっては優待の内容だけで投資先を決めるのはやめた方がいい。

株式投資で「億り人」になるための
銘柄の見つけ方

 では長期にわたって利益成長が見込め、時価総額が5倍、10倍になる企業というのはどうやって探せばいいだろうか?

 これについては定性的な面と定量的な面の両方で考えることが必要だ。

「定性的な面」というのはいくつかあるが、まずは、その企業が手がけている事業がどれぐらい付加価値の高いものであるかということ、言い換えれば世の中にあるさまざまな課題を解決しているかということである。したがって、その多くは革新的な技術や卓越した発想でモノを生産したりサービスを提供したりしている企業ということになる。

 次に大事なのは、他と比べて競争優位性があるかどうかということ。言い換えれば、どれほど良いサービスや技術であっても他社が容易にまねできないということが大切なことである。それは単に技術にとどまらない。それまでの歴史によって築かれたネットワークや顧客からの信頼というのもこの中に含まれる。