それは「営業利益」と「キャッシュフロー」である。営業利益というのはいわば本業のもうけを示すものなので、企業会計における5つの利益の中では最も重要なものと言って良いだろう。

 また、その企業のキャッシュの流れであるキャッシュフローを見ることも重要である。

 これはよく言われることだが、“Cash is reality, Profit is a matter of opinion.”(利益は意見、キャッシュは事実)であり、会計上の利益は操作できてもキャッシュの流れをごまかすことはできない。特に営業活動によって生じる収支を表した「営業キャッシュフロー」は極めて重要だ。この営業キャッシュフローが安定して増加していれば、継続的に資金が企業に流入している状態になっているので、他と比べて優位性があると考えても良いだろう。

株式投資で「億り人」になるための銘柄の見つけ方筆者・大江英樹氏の近著『となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」』(朝日新書)

 もちろんこれらの数字は企業の実態を表す一部にすぎないが、投資家にとっては重要なものである。

 プロの運用者であれば、もう少し精緻な企業分析が必要だが、個人投資家の場合はなかなかそこまで時間をかけることは難しいだろう。したがって前述したように定性的な観点から「世の中にある課題を解決し、かつ競争優位性がある」と思われる企業を自分で考えて選び出し、それらの企業の営業利益とキャッシュフローについて、過去5年なり10年なりの伸びを確認するぐらいでも十分だと思うし、筆者もそういった視点で株式投資を続けてきている。

 もちろん、それで絶対にもうかるという保証はないし、将来のことは誰もわからないので、現時点で利益成長が見込めると思って投資をしてもそうならずに株価が下落することはある。

 ただ、いくつかの銘柄に投資をし、その中のひとつでも5倍とか10倍になれば、それは大成功と言って良い。短期売買による利益には再現性がないが、利益成長を見込んだ株式を長期に保有することが投資で資産を築く最も合理的な方法なのではないだろうか。