18歳成人で「子離れ」の
時期にも変化が?

 ポイント3:親の子離れの時期を早めなければならない

 18歳になれば成人であって、もう子どもではない。そのことによってポイント1で挙げたような契約や責任の問題や、ポイント2で挙げた親権の及ぶ範囲の問題を家族として克服しなければならないわけです。しかし、それらの事態を俯瞰(ふかん)して考えれば、もう一つ重要なことが分かります。親御さんの子離れの時期が、今回の法律改正で早まるということです。

 これまでの20歳成年制というのは、現実の子育て面では優れた側面がありました。18歳になると子どもは大学生として実質的に独り立ちしていくのですが、法律上は未成年ということで、何か問題が起きれば親が介入できたわけです。

 実際の私の子育ての記憶でも、16歳から20歳まではいろいろと家族の問題が起きる時期で、うちの場合はそれほど大きな問題は起きませんでしたが、それでも子どもの考え方を変えさせるような局面はありました。

 そうして育てていくと、これは親の悪い点ですが、社会人になってもなんとなく子どもを指導しなければならないような気がしてしまうものです。しかし、子どもが20代中盤になれば、自立心の方が強くなるもの。子どもが社会人になるということは、当然、親が子離れすべきときでもあるわけです。

 それがこれまでの社会常識だったとすれば、18歳成年制という新しい制度は親にとって意識的に子離れの時期を早める必要がありそうです。

 ひとことで言えば、子どもが18歳になり大学生になれば、それはもう一人前の人間なんだという考え方に今年の4月1日をもって日本社会が変わるということです。それは過去18年間にわたって子どもを育ててきた親の立場からみれば、心配で仕方のないことでしょう。私も実際そうでしたから。

 その心配と折り合いをつけるための時期が、これまでの18歳から20歳になるまでの間の2年間のモラトリアムの時期だったわけですが、少なくとも法律上はもっと早く、子どもは成人にならなければならないと制度が変わる。だったら親も意識して2年ほど早く、子離れをする覚悟が必要になるわけです。

 具体的に言えば、子どもをどう育てるのかという計画は早めに立てたうえで、子どもが高校生のうちに子育てを完了することです。

「まだ大学までは子どもなんだからゆっくり育てていこう」というゆとり世代の子育て方針は、これからはもう通用しなくなる。子どもが成人になる時期が早まるということは、親の覚悟も早めなければならない。それが今回の法改正の一番大きな影響なのかもしれません。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)