新電力撤退戦Photo:Sebastian Kopp/EyeEm/gettyimages

日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格が、昨年に比べて3倍近い高値で推移している。JEPXから主に電力を仕入れる電力会社は、逆ざやが続いてキャッシュ流出が止まらない。「冬を越せない」と判断した一部のプレーヤーは、とうとう“撤退戦”を始めた。昨シーズンのように、倒産に追い込まれる電力会社も現れるかもしれない。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

ハルエネ、リケン工業、長崎地域電力…
事業者向け電力小売事業から撤退!

「身売り話が絶えない。うちもよそのことは言えませんが、やっぱり電力小売事業はもうからないし、厳しいですよ」。2016年4月に始まった電力小売り全面自由化を機に参入した「新電力」のある幹部は、ため息をついた。

 新電力に“冬の時代”が訪れている。最大の要因は、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格が高騰していることにある。多くの新電力は、顧客に販売する電力をJEPXから仕入れている。

 JEPXのスポット価格は、21年10月~11月は平均(24時間)で1キロワット時あたり10円~30円で推移し、昨年に比べて3倍近い高値だ。12月は13円~22円の価格レンジで高止まりしている。

 JEPXからの電力仕入れに依存せざるを得ない新電力は、スポット価格の高騰で逆ざやになり、“出血”が止まらない状況だ。

 こうした状況を受け、電力小売事業から撤退する新電力もすでに出ている。

 長崎地域電力は11月末、21年4月から22年3月末までの1年間で長崎県と結んだ電力調達契約を途中で解除した。同県の担当者は「スポット価格の高騰により、このままだと経営がもたないと(長崎地域電力から)申し入れがあった」と説明する。

 そのほか、兵庫県神戸市のリケン工業も事業者向けの電力小売事業から撤退。光通信系の新電力、ハルエネも事業者向けの電力販売を停止する方針が業界紙で伝えられている。

 なぜJEPXのスポット価格は、高騰したのだろうか。スポット価格の高騰は、いつまで続くのか。新電力を窮地に追い込んだ真犯人についても、次ページで詳報する。