今、中国人が日本に来るメリットは「敗者復活戦」

 コロナ感染の対策として、中国は「ゼロ感染」路線にこだわっている。そのため、西安など新規感染都市では、偏りすぎたロックダウン政策が施行されている。そのため大きな経済的打撃を受けており、企業の相次ぐ倒産、人員削減現象が各地で広く見られる。

 米系投資銀行ゴールドマン・サックス・グループは、今年の中国の経済成長率見通しを従来の4.8%から4.3%に引き下げた。感染力の強いオミクロン株の拡大で、新型コロナウイルス感染拡大を抑え込むのが一段と困難になっていることを理由に挙げている。

 一方、こうした局面を打破しようとする中国政府も、一連の安定化対策を打ち出した。たとえば、昨年12月中旬に開かれた中央経済会議では、雇用の安定、金融の安定、貿易の安定、外資の安定、投資の安定、期待の安定を意味する「六つの安定」(中国語で「六稳」)と、住民雇用の保障、基本的民生の保障、市場主体の保障、食糧・エネルギー安全の保障、産業チェーン・サプライチェーン安定の保障、末端の行政運営の保障を指す「六つの保障」 (中国語では「六保」)といった対策の継続実施をあらためて確認した。「雇用優先政策の実施」「雇用は最大の民生」といった視点は、明らかに習近平国家主席の考えを表している。とにかく、雇用の安定化への関心は高い。

 そんな中国での就職難の現象に押されて、就職口が見つからない中国国内の一部の労働者が、技能実習生や特別技能生として日本に流れてくる可能性が非常に大きい。

 学歴社会の中国では、名門校に進学できない若者が出世コースから外される現象はかなり普遍化している。近年、日本の大学または専門学校の門をくぐったこうした若者は、日本留学に敗者復活戦の希望を懸けるケースがほとんどだ。技能実習生や特別技能生が日本に就職口を求める傾向が強まっているのも、こうしたプランを考えているからだ。