医薬品情報を「やさしく伝える」ことが何よりも大切
日本OTC医薬品協会が、毎年7月24日を「セルフメディケーションの日」とし、7月24日を含む1週間をセルフメディケーション週間と制定するなど、「セルフメディケーション」という言葉がその姿勢や行動とともに一般的になりつつある。自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする(*5)という「セルフメディケーション」――その基本姿勢には、何が必要なのか。
*5 公益社団法人日本薬剤師会ホームページ 「セルフメディケーション」について より
吉田 当たり前ですが、病気になる前から健康には十分に気を付けることが基本だと思います。何らかの症状が出る前から自分の体にしっかり向き合うこと。最近は、検査キットも個人入手できます。たとえば、当社では、腸内フローラ(腸内細菌叢)の状態を知る検査キットを発売しています(*6)。「健腸計画トトノエール」という腸内環境を整える商品(機能性表示食品)もありますが、その商品だけでは腸内環境がどうなっているかまではわかりません。そこで、検査キットを使って自分自身の体の状態を知っていき、「自分に合ったケア」が何かを考えていくことができます。スマートウオッチで心拍数や血中酸素濃度がわかったり、スマートハウスでは家の中にいるだけで自分の健康状態がわかったり……セルフメディケーションのためのツールが世の中に存在していることも助けになります。
*6 健腸計画 腸内フローラ検査キット
「セルフメディケーション」の推進として、消費者はより正しい情報を得て、自分の体のわずかな変化にも気づいていく必要がある。そのために、医薬品メーカーに望まれることは多いだろう。
吉田 たとえば、心臓病の既往歴があったときには飲んではいけない薬があります。胃の状態が悪いのにふさわしくない医薬品を選んでしまったり、過去に患っていた病気をよく理解せずに医薬品を服用する方も多いでしょう。先ほど述べた「自分に合ったケア」というのはとても大切で、自分が飲んではいけない薬は何なのかを知っておく必要があります。私たちシオノギグループは、障がいのある方、外国人の方をはじめとするすべての方々に、「自分に合ったケア」の一助となる医薬品情報を「やさしく伝える」ことを目指していますが、まだまだ道半ばです。パッケージの裏にあるアクセシブルコードの存在やピクトグラムの表示を知っている方・気づく方はまだ少ないでしょう。外国人の方のコミュニティーに向けて積極的に発信したり、メディアの方の協力を得て広く世の中に伝えていったり……「セルフメディケーション」を促進していくためにも、私たちがするべきことはたくさんあります。
アクセシブルコードについて言えば、やがて、多くの医薬品に付いて、それが当たり前の世の中になるといいなと思います。ドラッグストアさんも「この医薬品はアクセシブルコードから情報を得られます」とお客さまに伝え、専用の棚ができていくと、みんなの手に届きやすくなりますね。メーカーと小売店がうまくかみ合うことで、医薬品のバリアフリーが進むことを願っています。
※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。