「評価者」はあくまでもお客様であり、組織内には存在しない。短期的には会社の評価制度にもとづく「評価者」が人事評価をするものの、中長期的にはお客様からの評価がその人のプロフェッショナルとしての評価を決めるのだ、という考え方です。

 プロとしてはお客様のために仕事をしているのであり、上司のために仕事をしているわけではないからです。

 そして、同じようにライバルも社内にはいません。ライバルはあくまでも同業他社です。評価者であるお客様へのサービス提供の機会を奪うのは同業他社の人たちであり、社内の同期や同僚ではないのです。

 プロスポーツの世界のように、レギュラー人数がルールで固定されていて、そのポジションを競い合うというケースであれば、まだわかります。

 しかし、企業規模にはルールも上限もなく、仕事で成果を上げてお客様に評価されれば、ポジションを作り出すことだって可能なわけです。

 私はこのように考えられるようになって、自分の仕事の質や、仕事に対する向き合い方がより高いレベルになっていったのを鮮明に記憶しています。

 ただ、こう考えられるようになるまでには、私も長い時間がかかりました。

 事実として等級や報酬、賞与を決めるのは直近の上司の評価ですし、同期や同僚の間で比較されて昇進が決まるケースがほとんどです。

「なぜこんなに頑張っているのに、あの人だけ優遇されるのか?」そんな気持ちになったことは1度や2度ではありません。

 そんなときに、上司に媚びへつらうとか、同期の足を救うために攻撃する、という行動に出ると組織は健全になるでしょうか。そもそも、それ、やりたいですか?

 このような機会にこそ、視点を移して「評価者はお客様」「ライバルは競合他社」と考え得ると、次に取るべき行動がまず変わります。そして、それは組織を健全にする行動です。多くの人が前向きに取り組めるため、気持ちがとても楽になります。

 見るべき相手を間違えてはいけません。