実力があるのに昇進しないなら
「できた余裕」を別のことに使ってみる

 組織の中で働くためには、役職というのは重要ですよね。

 多くの組織の場合、役職と責任や権限は一致することが多いので、面白い仕事をしようと思えば、重い責任や高い権限がある役職につくことがひとつの近道になります。

 しかし、役職は組織の事情で決まる、という側面があります。必ずしも個人の意図や努力だけで叶うものではありません。

 そういう場合の、気持ちや頭の整理はキャリアを考えるうえでとても重要です。

 私もキャリアの一時期、早く高い役職につきたいと思って日々努力していました。

 ですが、会社の求めるものと自分のやりたいことが必ずしも一致していなかったため、売上目標を500%とか600%という数字で何年も連続で達成していたのに、納得いかない理由で昇進・昇格審査を落とされる時期もありました。会社の押す製品やサービスに関わっている人が優先されたわけです。

 昇進昇格することだけを純粋に突き詰めれば、自分の信じるサービスよりも会社が力を入れているサービスを担当して結果を出せばいいのですが、当時の私はどうしてもそれができませんでした(会社の論理からすれば仕方がないですよね、と今であれば言えます)。

 何度も腐りそうになりましたし、会社をやめることも考えました。しかし20代にジョブホッパーであった私は、30代は一社で過ごすことを決めており、それは思い留まりました。

 長い間同じ役職に付いているとどうなるか、というと、年を追うごとに仕事が楽になります。8時間で終わっていたものが6時間。翌年はさらに5時間と。当然ですよね。能力は上がっているのに求められる役職は変わらないわけですから。

 年度が明けて最初の月にはほぼその年の目標達成が見えている、という状況でした。

 そんな時に私がどうしたか、というと浮いた時間を有効活用し始めたのです。

 MBAを取ると決めて動き始めたのもこの時期ですし、書籍を執筆しはじめたりもしました。会社のことは好きだったこともあり、社内研修の講師や各種社内タスクなども引き受けました。仕事で求められること以外で培えるスキルや社外ネットワークを獲得することができたため、結果的に会社の仕事も質がさらに上がる、という結果につながりました。

 諸々の条件が整った結果、相変わらず私が担当していた“本業”の内容は理解されませんでしたが、昇進昇格の申請は受理されました。会社としてもその役職にとどめておくわけにはいかなかったわけです。

 役職をあげたいのであれば、会社が求めることを素直に実施することが最短の道筋です。それがどうしてもできないのであれば、下の役職に留まりながらも、浮いた時間で何か工夫してみる、ということがポイントです。

 もし、役職が上がらないのに、求められる仕事が上の役職と同じレベルである場合は別の問題を孕んでいます。会社の相談窓口に問い合わせる、他社への転職を考える、といった行動を検討するべきかもしれません。