<Aさんの給付基礎日額>ただし歴日数は90日とする
 甲社の給付基礎日額 30万円×3カ月÷90日=1万円……(ア)
 バイト先の給付基礎日額 7万2000円×3カ月÷90日=2400円……(イ)
(バイト先の給付基礎日額は、甲社分と合算する場合は最低保証額の適用はしない。〈1〉の式で計算する)
 Aさんの給付基礎日額
 (ア)+(イ)=1万2400円

参考:複数事業労働者への労災保険給付わかりやすい解説(PDF、11ページ)

「結論として、Aさんは労災から1日いくらの給付金がもらえますか?」
「Aさんの1日あたりの休業補償給付額は、1万2400円×0.8=9920円です」
「1日あたりこの額なら、A君の賃金保障はひとまず安心です。会社としてはどんな手続きをしたらいいでしょうか?」
「複数事業労働者としての労災保険給付の請求を、所轄の労働基準監督署に行ってください」
「ちなみに休業中でも年次有給休暇の利用はできますか?」
「可能です。ただし、有休を取得した日については給料を支給したことになるので、休業補償は給付されません」
「それともう一つ。労災の申請をして、健康保険の傷病手当金も申請することは可能でしょうか?」
「本来は労災扱いの場合、傷病手当金の受給はできません。しかし労災認定には一定の時間がかかるため、その間のつなぎとして傷病手当金を申請するケースもあります。その後労災の休業補償を受けた場合、すでに支給された傷病手当金は健康保険に返還します」

無断でバイトを
していた件は?

 E社労士は更に付け加えた。

「ところで、Aさんが無断でバイトをしていた件はどう対処しますか?」
「ウチの就業規則では副業に関する規程はありません。これまでA君のようなケースはなかったので悩んでいます」
「副業を希望する社員が出たときのために、副業を認めるか否か会社の方針を決めて就業規則に記載し、社員に周知してください」