社員がバイト先で怪我をした場合、
会社は手続きをする必要があるか?

 Aを見舞った後、会社に戻ったC総務課長は、Aの件の手続きをどうすればいいのか悩んだ。

「A君はバイト先の労災を請求するから、ウチの会社は何も手続きをしなくてもいいのかな?でも今回のようなケースは初めてだから自信がないなあ。そうだ、念のためE社労士に聞いてみよう」

 その日の夕方、C総務課長は別件で甲社を訪れたE社労士に会うなり、早速Aの件についての詳細を説明した。そして、「ウチの会社は10年前に設立したばかりで、幸いにも今まで労災扱いで休んだ社員はいないし、ましてやA君のように他でバイト中にケガをして会社を休むといった例もありません。だから労災の休業給付についてよくわからないので、そこから教えてもらえますか?」

<労災保険の休業(補償)給付とは>
○ 業務に起因(業務災害)または通勤途中(通勤災害)のけがや病気などで働けなくなった場合の給料補てんを目的として支給される。
○ 業務災害の場合は休業補償給付、通勤災害の場合は休業給付というが、補償内容は同じである。
○ 休業(補償)の支給要件
 ・ 労災事故によるけがや疾病で療養をしていること
 ・ 働くことができない状態であること
 ・ 会社から賃金をもらっていないこと
○ 休業補償給付の支給開始日と期間
 休業4日目分から支給される。支給期間は最大療養開始日から1年6カ月まで。
○ 休業1日目から3日目までの扱いについて
 業務災害の場合は休業3日目までの賃金は会社に請求できる(Aの場合はバイト先に請求する)。
 通勤災害の場合は会社には請求できない。
○ 休業(補償)給付額
 1日につき原則給付基礎日額の80%(ただしその内の20%は特別給付)

「話の内容はよくわかりました。そこで確認ですがAさんのようにバイト先でケガをした場合、ウチの会社では労災の手続きをする必要はないですよね?」
「いいえ。甲社も労災請求手続きが必要です」

 そしてE社労士はその理由について、Aの例で説明した。