2020年に法改正、複数社就労者は
賃金を合算して請求できるようになった

○ Aの本業は甲社の社員だが、バイト先のジムで労災事故に遭った場合、従来労災の請求は災害が発生した事業場(ジム)のみが行っていた。
○ しかし、上記の方法だと労災の給付金がジムでの賃金のみで計算されることになる。
○ Aのように入院治療が必要な場合本業の会社も休むことになるが、その際労災の給付額が少ないので、休業中の賃金保障額としては心もとない。
○ 国の施策として労働者に副業を奨励している経緯があり、2020年9月に労災保険法が改正された。そこで本業の他に副業をしている人、つまり複数就業者が労災事故に遭った場合の給付額は、労災事故を起こしていない会社の賃金額も合算して算定ができることになった。

「法律が改正されたことはわかりました。ところでA君の場合、1日あたり労災からいくら支給されるのでしょうか? 計算方法も合わせて教えてください」

 D社労士は具体的な計算方法を挙げた。

「始めに、休業(補償)給付の計算の基礎となる給付基礎日額の計算が必要です」

給付基礎日額の
算出方法

<給付基礎日額の算出方法>
(1) 労災事故が発生した日(賃金締切日が決まっているときは、その直前の賃金締切日)の直前3カ月間に支払われた賃金総額(ただしボーナス等は除く)÷その期間の歴日数
(2) 労災事故が発生した日(賃金締切日が決まっているときは、その直前の賃金締切日)の直前3カ月間に支払われた賃金総額÷その期間の実労働日数×60%
(3) 給付基礎日額の最低保障額 令和3年8月1日現在、3940円

○ 従業員の賃金が月給の場合は(1)を、日給・時間給・出来高払いの場合は(1)(2)(3)のうち最も高額になる式で計算する。

「例えば、Aさんの甲社での月収が30万円、バイト先の月収が7万2000円だったとします。この場合、甲社とバイト先の給付基礎日額を別々に計算してから合算します」