財閥系大手への依存度が高く
若年層のチャンスが少ない状況が深刻化

 コロナ禍が発生して以降、韓国の労働市場の改善ペースが鈍い。GDP(国内総生産)は増えているにもかかわらずだ。半導体輸出などに支えられ、21年通年の実質GDP成長率は、前年比4.0%増だった。

 金額ベースで見ると、感染が深刻化する前の19年10~12月期の実質GDPは469兆7795億ウォン(約44.7兆円)だったのに対し、21年10~12月期は483兆701億ウォン(約46兆円)に増加した。マクロレベルでは韓国経済の回復力は世界的に高いといえる。理論的に考えると、GDPが増えれば労働市場は改善するはずだ。

 しかし、現実の労働市場全体は、期待されたほど改善しているとはいえない。21年の労働参加率は62.8%で、19年の63.3%を下回った。働く意思を持つ人が減っている。

 また、21年の就業者数は前年から36万9000人増えた。ただ、増え方に問題がある。世代別では、60歳以上の就業者数が33万人増と他の世代よりも多い。本来なら、景気回復によって人々の労働意欲が向上し、若年層を中心に就業者が増加するのが望ましい。韓国の労働市場は、若年層のチャンスが少ない状況が深刻化している。

 その一因に、財閥系大手企業への経済依存度の高さがある。韓国経済はサムスン電子など大手メーカーが、日本をはじめとする諸外国から資材を輸入し、韓国内で製品を大量生産して輸出する産業モデルで成長してきた。財閥系大手に勤めるには、有名大学を卒業して厳しい就職活動に勝ち残る必要がある。それが難しい場合、満足いく就業先を見つけることは難しいという。そうした状況が深刻化しているとみられる。

 また、左派政治家である文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、労働組合に有利な政策を実施した。「重大災害処罰法」はその一つだ。文氏の経済政策は中小企業の体力をそいだ。若年層の雇用・所得環境はますます厳しくなっている。