コロナ感染再拡大や
中国経済減速などの悪影響

 今後、韓国の雇用・所得環境の不安定感はさらに高まる可能性がある。短期的な要因として、まず、コロナ感染再拡大の悪影響は大きい。1月中旬に入り韓国のコロナ新規感染者数は再増加に転じた。

 英国などの推移を基に考えると、感染者数がピークに達すればその後は再拡大が落ち着く可能性はあるが、先行きは楽観できない。特に、感染再拡大は人々の恐怖心理を高める。それは人流・物流の寸断を長引かせ、雇用の受け皿である飲食や宿泊などサービス業の業況は軟化するだろう。

 また、韓国の貿易収支の黒字が減少、あるいは赤字転落するリスクも軽視できない。それは輸出依存度の高い韓国経済の、先行き懸念を高める。最大の輸出先である中国は、不動産市況の悪化とゼロ・コロナ対策によって経済の減速傾向が鮮明だ。韓国の対中輸出は減少する恐れがある。

 また、輸入物価の上昇リスクも高まっている。中国のゼロ・コロナ対策などを背景に、世界のサプライチェーン寸断の解消は容易ではない。脱炭素を背景に、エネルギー資源価格にも上昇圧力がかかっている。卸売物価を中心に世界の物価上昇圧力は高まるだろう。

 それは米金利を上昇させ、ウォン売り圧力がかかりやすい。ウォン安は輸入物価を上昇させ、交易条件の悪化要因になり得る。加工貿易による韓国の経済運営は一段と難しくなり、企業の採用意欲は低下する恐れがある。

 韓国銀行(中央銀行)が追加利上げを実施する可能性が高まっていることも、労働市場の改善にマイナスだろう。韓国では家計や中小企業の債務残高が増加している。利上げによって債務者の元利金返済負担は増える。金利上昇は、レバレッジをかけて株式や仮想通貨に投資(投機)した個人にも打撃を与えるだろう。

 それらはいずれも、韓国の内需が減少する要因になる。内需が減少すれば、国内での設備投資や小売業の売り上げは減少する。それも雇用・所得環境を下押しするだろう。