沸騰!M&A仲介 カネと罠#1Photo by Yasuo Katatae

日本M&Aセンターは、「乗っ取り」という日本に根強く残っていたM&Aのイメージを変え、仲介業市場を切り開いてきたパイオニアだ。特集『沸騰!M&A仲介 カネと罠』(全15回)の#1では、そんな“絶対王者”が今、自縄自縛に陥り、築かれつつある包囲網の脅威にさらされている現状に迫った。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

日本M&Aセンターが決算延期を公表
起こるべくして起こった「絶対王者」の軋み

「売り上げの期間帰属等に関して疑義のある事象が存することが判明しました」

 2021年12月20日、日本M&Aセンターホールディングスは、M&A仲介事業を担う子会社、日本M&Aセンターで、四半期ごとの売上認識において一部不適切な点があると公表。その1カ月後には、調査に時間がかかるため、1月28日に予定していた22年3月期第3四半期の決算発表を、2月14日に遅らせると発表した。

 M&A仲介業とは、事業を売却したい企業と、買収したい企業をマッチングさせ、M&A(企業の合併・買収)の成約を仲立ちするビジネス。日本M&Aセンターは、M&Aに「乗っ取り」のイメージがまだ根強かった約30年前に仲介ビジネスを始め、市場を切り開いたパイオニアだ。成約件数やノウハウ、業績など全てにおいて、同業他社の追随を許さない“絶対王者”である。

 上場する業界トップ企業の決算発表延期は、株式市場だけでなく、顧客やM&A仲介で協業する銀行や士業などの他業界からの信頼も損なう一大事だ。ところが、周囲からは意外なほど冷静な視線が向けられている。

 さもありなん――。

 日本M&Aセンターの内実に詳しい複数の関係者と元コンサルタントは、この事態は起こるべくして起こったとみる。そして、同社をM&A仲介業界最大手に押し上げた成長の“エンジン”が、いよいよ軋み始めたと捉えているのだ。

 同社のエンジンとは何か。またその軋みはなぜ起こっているのか。次ページで詳しく解説していく。