21年11月から無症状でも感染の不安があれば
誰でも無料検査を受けられることに

「PCR検査」や「抗原検査」は、ヒトの体内にウイルスが侵入しているかどうかを調べるもので、検査した時点での感染の有無を確認するのに役立つ検査だ(検査の詳しい内容は、本コラムの第232回参照)。

 PCR検査に健康保険が適用されたのは20年3月で、同年5月には最初の抗原検査キットが薬事承認を受けた。検査にかかる医療費(診療報酬)は、PCR検査が1万9500円、抗原検査が7440円(いずれも検査判断料含む)。

 通常の健康保険のルールでは、年齢や所得に応じて、かかった医療費の一部(1~3割)を自己負担することになっている。

 ただし、新型コロナウイルス感染症の検査費用に関しては、蔓延(まんえん)を防止する観点から、自己負担分は公費負担で、患者の窓口負担は免除されている。たとえば、70歳未満の人(本来の自己負担割合は3割)が、1万9500円のPCR検査を受けた場合、本来なら自己負担する5850円が無料になる(検査費用以外の初診料や再診料などは、通常通りの自己負担が発生する)。

 しかし21年11月までは、健康保険の適用対象になるのは、新型コロナウイルスの感染を疑われる症状があるなどで、医師や保健所が必要だと判断した場合のごく一部の人だけだった。そのため、「仕事で感染しているかいないか調べる必要がある」「症状はないが、感染しているかどうか不安」など、業務上の都合や個人の希望でPCR検査を受ける場合は、検査費用の全額が自費となっていた。

 だが、昨年11月。第5波がピークアウトして、感染状況が落ち着いていた頃合いで、感染防止と社会経済活動の両立を目指して、国は「ワクチン・検査パッケージ」の一環として、PCR検査や抗原検査の無料化事業を発表した。無料で検査を受けられる人の範囲が、症状のある人や濃厚接触者だけではなく、社会経済活動に必要な人にも広げられることになった。

 無料検査の枠組みは、次の二つ。

(1) 健康上の理由などでワクチンを接種できない人(ワクチン検査パッケージ・対象者全員検査等定着促進事業など)
(2) 感染拡大の傾向が見られる場合に、都道府県の判断で、ワクチン接種歴を問わずに希望者全員(一般検査事業)

(1)は、たとえば、アレルギーがあってワクチンを接種できない人が、「コンサートに行く」「飲食店を利用する」といった場合に、無料で検査が受けられるもので、運用期間は22年3月までとされていた。

(2)は、感染が拡大してきた場合に、新型インフルエンザ等特別措置法の第24条第9項に基づく都道府県知事の判断で、検査を無料にできるというもの。発熱などの症状はなく、濃厚接接触者でもないが、感染に対する不安のある人なら誰でも検査を受けられるというものだ。こちらは、適用期間は、知事が必要と認める期間とされた。