墨田区保健所長Photo by Satoru Okada

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での新型コロナウイルス感染症患者の感染状況から、無症状感染者へのPCR検査の必要性を痛感。検査を駆使し、院内感染の抑え込みや大相撲の実施に道を開いたのが、東京都墨田区保健所の西塚至所長だ。工夫に満ちた独自のコロナ対策についてインタビューした。上下2回でお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 岡田 悟、野村聖子)

昨春の院内感染では片っ端からPCR検査
都の方針と違い発熱外来を独自に公表

――墨田区ではさまざまな場面でPCR検査を広く実施してきたと報じられています。

 4月10日時点で、区内のPCR検査のキャパシティーは1日当たり50件程度でした。

 当時対応に追われたのは、院内感染が発生した区内の医療機関での検査です。感染症指定医療機関である東京都立墨東病院で4月に院内感染が広がりました。

 ここでは753人にローラー作戦で検査を行い、43人の陽性者を特定して、短期間で診療を再開させることができました。無症状でも別の人に感染させると判明していたので、症状のある人だけを追いかけていても、陽性者を拾いきれない。ですから、医療従事者や患者に片っ端から検査をしたのです。

 その後、区内の医療機関で検査をできるようにして体制を拡充し、8つのすべての救急病院でPCR検査を可能にしました。8月時点で、検査のキャパシティーは1日当たり150件になりました。

 昨年末には第3波に備え、区内54の発熱外来で、1日当たり530件の検査ができるようにしました。発熱外来を設置している医療機関名も公表し、年末年始も輪番制で、総合病院は必ず発熱外来を開いている状態にしてもらいました。

 都は発熱外来を設置している医療機関名を公表していませんが、墨田区は独自に公表しています。熱が出たらあそこに行けばいいと分かっている方が、区民の安心につながると考えたからです。