グラティ パーパスには大きく分けて「表層的なパーパス」と「深層的なパーパス」(=ディープ・パーパス)があります。

 表層的なパーパスと深層的なパーパスとの違いは、主に二つあります。一つは「パーパスステートメント」ができあがるまでの過程です。

 パーパスステートメントを書くのは簡単です。マーケティング会社を雇えば、すばらしい文言を考えてくれるでしょう。しかし、できあがった美辞麗句を社員に伝え、PRキャンペーンを行い、ブランディングに使えば、「パーパス経営」を実践したことになるのでしょうか。結局のところ、社外の人が考えたパーパスは表層的にしか機能しないのです。

 一方、深層的なパーパスは、社員や役員が長い時間をかけて何度も議論する中から生まれるものです。

 例えばマイクロソフトのパーパスは、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」(Empower every person and every organization on the planet to achieve more)ですが、この言葉にたどり着くまで社内で長い時間をかけて徹底的に議論したと聞きました。

 つまり、マイクロソフトの社員が動機付けられるような言葉を探していく過程が必要だったのです。この一文は、平易な言葉で書かれているように見えますが、一つ一つの単語がマイクロソフトの社員にとっては大きな意味を持ちます。

 もう一つが、パーパスの活用方法です。マイクロソフトのCEO、サティア・ナデラ氏は私に「パーパスステートメントを掲げることは簡単だ。しかし、それを社内に浸透させていくことはとてつもなく難しい」と語ってくれましたが、何もしなければパーパスは表層的なままで、ただオフィスの壁に貼ってあるだけの存在になってしまいます。

 マイクロソフトの社員は戦略立案、人材採用、新規事業開発など、どんな仕事をする際にも、パーパスを意識しながら仕事をしています。組織の隅々にまで実装され、社員の一人一人の行動指針になってはじめて「深層的なパーパス」といえるのです。