日本企業が「企業理念」を
深層的に活用するヒント

佐藤 マイクロソフトの公式ウェブサイトでは、パーパスを「ミッション」と表記していますが、パーパスとミッションは同義語ととらえてよいのでしょうか。

ランジェイ・グラティ教授ランジェイ・グラティ教授 (C)Russ Campbell

グラティ パーパスとミッションは厳密には意味が違うという経営学者もいますが、実質的にはほぼ同義語として使われています。

 ミッションよりもパーパスを採用する企業が増えてきているのは、ミッション・ステートメントには形骸化しやすいという問題があったからです。ミッション(使命)には「外から与えられる」イメージがあり、社員が自分に関わることとして受け止めづらいのです。

 一方、パーパス(目的)は、会社の内部から生まれるものですから、社員がより当事者意識を持ちやすいと言われています。そのため社員の行動や意欲に結びつきやすいのです。

佐藤 日本企業のオフィスを訪問すると、よく毛筆で書かれた企業理念が飾られていますが、こうした企業理念をオブジェではなく、深層的に活用するにはどうしたらよいのでしょうか。

グラティ 日本には長寿企業が多いですから、どの企業にも創業の精神があるでしょう。これは日本企業の大きな強みです。デンマークの老舗玩具メーカー、レゴが苦境に陥ったとき、創業の精神に立ち返ってパーパスを再定義し、V字回復した話は有名ですが、それほど創業の精神には力があるのです。

 まずは社史を読み、創業の精神を引っ張りだしてきて、現代のパーパスとして再定義することです。重要なのは、単に過去を振り返るだけではなく、それをもとに社内で議論を重ね、未来へつなげる作業をすることです。