ただ連続立体交差事業による高架化・地下化は鉄道の改良工事ではなく、あくまで地上にあった設備と同程度のものに作り替えるのが原則なので、工事とあわせて設備を増強するとなれば話は別だ。

 西武池袋線では1990年から2015年にかけて西武池袋線桜台~大泉学園間の連続立体交差事業が行われたが、高架化にあわせて練馬~石神井公園間が複々線化され、増額分の事業費は西武が全額負担した。

 京王線柴崎~西調布駅間および相模原線調布~京王多摩川駅間約3.7キロで2003年から2014年にかけて行われた地下化でも、調布駅での京王線と相模原線の平面交差を解消するために線路も立体交差化したことから、事業費約1150億円のうち約650億円を京王が負担している。

 上記のように近年、大規模な連続立体交差事業が次々と完成しているが、都心の踏切はなお多く残っている。国土交通省は昨年3月、1961年の制定以来5年ごとの時限立法として運用してきた踏切道改良促進法を恒久化するなど対策を強化しているが、そもそも諸外国と比較して都市部に踏切が多すぎる日本では、抜本的な解決には気の遠くなるような時間を要することになるだろう。

東京の踏切数は
パリの約90倍

 なぜこんなに踏切が多いのか。国土交通省の資料によると2014年度末時点の海外主要都市の踏切数は東京23区が620なのに対して、ニューヨークが48、ベルリンが46、ソウルが16、ロンドンが13、パリ(周辺3県含む)が7と、けたが違う。このうちソウルとパリは23区と面積がほぼ同等である。

 日本は路線数が多いからと思うかもしれないが、都市部の鉄道に限ればどこの都市も遜色ないネットワークを有している。日本の都市鉄道は根本的に性質が異なるのである。

 敷かれたレールに沿って走る鉄道にとって、線路上の障害物は事故に直結する。1830年に開業した世界初の鉄道と1872年に開業した日本初の鉄道は、どちらも開業初日に線路内に立ち入った人と接触する人身事故が起こっている。