鉄道への造詣が深い地理・地図研究家、浅井建爾氏の新著『読めば読むほどおもしろい 鉄道の雑学』からの抜粋で、鉄道にまつわる素朴な疑問をわかりやすく読み解く。今回は、JR特急の止まらない県庁所在地と、新幹線が走っているのに駅がなく通過されるだけの都道府県にフォーカスする。
那覇以外の県庁所在地で
JR特急が止まらないのは?
県庁所在地の多くは、その県における政治・経済・文化の中心である。したがって、那覇市を除くどの県庁所在地にもJR路線が走っているし、特急列車が停車する。しかし、JRの路線が市内の中心部を通っているにもかかわらず、特急列車(臨時列車はのぞく)が停車しない県庁所在地が、全国で1ヵ所だけあった。
県都とはいえない県庁所在地といえば、かつての埼玉県浦和市が思い浮かぶが、さいたま市となったので上の例からもれる。そのうえ、浦和駅はかつて、特急の停車しない県庁所在地として知られていたが、現在では、ほぼすべての特急が停車するようになり、汚名を返上した。
JR路線が走っているのに、特急列車が停車しない全国で唯一の県庁所在地の駅は、奈良市にある奈良駅である。奈良駅は3面5線を有する高架駅で、関西本線、奈良線、桜井線の3線が乗り入れるJRのみの駅である。乗降客も比較的多い。それなのに、なぜ特急が停車しないのか。
理由は簡単、奈良駅を通っているいずれのJR路線にも、特急列車が運行されていないからである。