トヨタ自動車は「2030年にEV(電気自動車)350万台販売」に向けて車載電池の生産を拡大する。パナソニックから引き継いだ国内工場で一部増産に入っており、米国での現地生産に手を打った。世界では激しい電池争奪戦が繰り広げられており、これらの方策だけではトヨタの必要量に全く足りていないのが実情だ。特集『絶頂トヨタの死角』の#8では、トヨタの電池調達戦略の急所に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
本格EV発売前にそろり電池を増産も
生産能力「40倍超」増強の見通しは立たず
トヨタ自動車は本格的なEV(電気自動車)シフトの第1弾として新型EV「bZ4X」を2022年半ばから世界各地で販売する。これに合わせて、トヨタグループの電池工場ではそろり稼働をスタートさせたようだ。
兵庫県姫路市の電池工場では、EV電池の生産能力を年間8万台分増強する計画を打ち出しており、21年から順次生産を拡大している。
この工場は、元々はパナソニック資本の液晶工場だった。すでに液晶事業から撤退しており、その空きスペースを活用してトヨタ向けEV電池の生産増強に充てている。今後も一段の増産が続く予定だ。
一方、トヨタの車載電池工場の本拠地は兵庫県加西市にある。これは旧三洋電機の電池工場で、パナソニックの傘下を経て、20年4月からトヨタグループ入りした。今のところは、ハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)用の電池生産がメインだが、今後はEV電池に主軸を移していくとみられる。
昨年春の時点で、トヨタのリチウムイオン電池の生産能力は年6ギガワット時(GWh)。これを30年のEV販売350万台の目標に向けて2兆円を投資し、40倍を超える270GWhまで拡張する計画だ。
それにしても、これだけの生産能力を本当に増強できるのか。当然、国内生産だけでは足りないので、海外主要地域で生産するか外部調達するかの布石を打つ必要があるのだが、その見通しは不透明なままだ。世界の競合自動車メーカーと比べても慎重姿勢が目立つ。
果たして、トヨタが電池投資に及び腰なのはなぜなのか。次ページではその内実を明かすと共に、トヨタの電池戦略に欠けている「重要なピース」についても取り上げる。