経済産業省が、トヨタ自動車とパナソニックの電池合弁会社などの車載電池向けに1兆円を超える規模を超える金融支援を検討している。電気自動車(EV)の基幹デバイスとなる車載電池では、中国CATL(寧徳時代新能源科技)を筆頭に中韓勢による激しい投資競争が繰り広げられており、日の丸電池の再起を図ろうとしているのだ。だが、当の電池部材メーカーからはその「血税補助金」の使い道に批判の声が上がっている。特集『EV・電池・半導体 脱炭素の最強カード』(全13回)の#7では、日本のEV・電池産業の活路を開く“勝ち筋”について考えてみたい。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子、新井美江子)
トヨタのお家芸「原価の造り込み」は
電池の世界では通用しない
「補助金をつけるならば、電池のセルメーカー(トヨタ自動車とパナソニックの電池合弁会社)ではなくて、部材メーカーに設備資金として金を付けるべきだ。このままトヨタ・パナ連合に補助金を付けてもうまくいかないだろう」(電池サプライヤー幹部)。
昨年末に菅政権が掲げた「2050年カーボンニュートラル(炭素中立。二酸化炭素の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすること)に伴うグリーン成長戦略」を受けて、30年半ばに新車販売を「ガソリン車ゼロ」とする政府の目安が示された。
ガソリン車から電気自動車(EV)を主軸とする電動車へーー。この劇的変化で、日本の基幹産業たる自動車業界がつぶれるようなことになれば、日本の一大事である。そこで経済産業省は、自動車産業を支援する目的で、EVに搭載される車載電池産業に最大で数兆円規模となる巨額の補助金を付けようとしている。
支援の対象は、トヨタとパナソニックの電池合弁会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ(PPES。出資比率はトヨタ51%、パナソニック49%)」や、リチウムイオン電池の主要4部材(正極材・負極材、電解液、セパレータ)など電池サプライチェーンに組み込まれている企業群となる見込みだ(詳細は特集『脱炭素 3000億円の衝撃』の#1『トヨタ・パナ電池合弁に血税補助金1兆円!日本はEVで「半導体の二の舞い」を避けられるか【スクープ完全版】』参照)。
だが早くも、トヨタ・パナソニック連合に偏った金融支援が検討されていることに対して、批判が巻き起こっている。昨年4月にPPESが始動して1年近くが経過し、経営の実態が明らかになるにつれて、電池サプライヤー幹部が異口同音に懸念を語るようになっているのだ。