新型コロナウイルスは、国内最強を誇ったトヨタ自動車の販売網にも大再編を迫っている。課題だった人口減少や「所有から利用へ」のシフトに拍車が掛かり、ディーラーの抜本整理が不可避になっているのだ。特集『電機・自動車の解毒』(全17回)の#05では、トヨタ系ディーラーの間で始まった、食うか食われるかの死闘に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
コロナとトヨタの改革前倒しの
ダブルパンチで淘汰が加速
トヨタ自動車が5月12日に発表した2020年3月期決算は、トヨタの基礎体力の高さを証明するものだった。新型コロナショックの影響はあったものの、営業利益は前年並みの2兆4428億円を確保したのだ。日産自動車や三菱自動車が最終赤字を見込む中では、堂々の「横綱相撲」ぶりといえる。
一方でトヨタは、コロナの影響が本格化する21年3月期業績予想は減収減益の見通しを示した。営業利益は前年同期比8割減の5000億円を見込む。
大減益予想にも、会見した豊田章男・トヨタ社長はあくまでも強気だった。「コロナショックによる販売の落ち込みはリーマンショックのときよりも大きい。それでも黒字確保を見込めるのは、企業体質が強化された成果だ」と、固定費削減や原価低減の実績をアピールしたのだ。
しかし、である。豊田社長のプレゼンテーションを聞いて、コロナ下のビジネスに希望を見出したトヨタ系ディーラーは少なかったに違いない。
ディーラーの最大の関心事である21年3月期の販売台数予想は700万台と、前年同期と比べて2割以上も減少した。「(4月の販売実績が前年同月を上回った中国に比べて)日本国内は厳しい状況だ」(近健太CFO)と母国市場に対するシビアな見方が示されたからだ。
トヨタ本体の経営幹部にそう指摘されるまでもなく、コロナ後の消費者の変化を肌で感じるディーラーは、強烈な危機感を持っている。
ディーラーの営業現場からは「販売台数は3月までは前年比1割減、4月以降は同3割減った」「利益の大半を依存する修理・車検などのサービス事業の売上高が2割も少なくなった」といった悲鳴が上がっている。