トヨタ自動車と取引のある「下請け企業数」において、トヨタの城下町・愛知県が東京都に負けるという歴史的敗北を喫した。その背景には何があるのか。また、愛知経済の地盤沈下はトヨタ系サプライヤー“再編成”の起爆剤にもなり得る。特集『絶頂トヨタの死角』の#9では愛知県で加速する「ケイレツ大再編」の最終形を大胆に予想する。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
トヨタの城下町・愛知県に激震
加速する「ケイレツ大再編」の行方
トヨタ自動車の城下町、愛知県に激震が走った。帝国データバンクが実施したある調査結果が大きな波紋を呼んでいるのだ。
「トヨタ自動車グループ」下請け企業調査(2021年)──。対象はトヨタグループと取引のある一次下請け企業(ティア1)と二次下請け企業(ティア2)で、その合計社数は全国で4万1427社に上る。
それによれば、「下請け企業数」で愛知県が7586社(全国シェア18.3%)、東京都が7800社(同18.8%)となり、愛知が初めて他の都道府県に追い抜かれたという。
これは、トヨタのお膝元が敗れるという歴史的逆転劇である。数は力だ。愛知の産業界にとって、自動車のサプライヤーピラミッドを形成する“主力メンバー”の数で東京に負けたという事実は受けとめがたいものだろう。
だがそれ以上に、地元のショックが大きかったのは負けた理由である。
どういうことか。次ページでは、愛知が東京に敗れた致命的な理由を解説していこう。実はこの理由こそ、愛知経済の地盤沈下をもたらし、サプライヤーに再編成を促す「きっかけ」ともなり得るものだ。
自動車産業には、EV(電気自動車)を主軸とする電動化、脱炭素化の波が同時に押し寄せており、大変革のときを迎えている。ついに、EV慎重派とみられていたトヨタも「2030年にEV350万台販売」という目標を掲げた。
EVシフトの大号令は、トヨタを頂点とする「ケイレツ下請け構造」に大きなひずみをもたらしつつある。本稿では、愛知県で加速する「ケイレツ大再編」の最終形も大胆に予想する。