玉石混交の講師陣
注意深い選定を

 ゲームコーチングを展開する事業者はさまざまだ。今のところゲームコーチングのマッチングサイトに登録して始めるのが主流らしく、有力サイトならプロゲーマーからの指導を受けることもできる。
 
 開拓され始めた分野であり、コーチング部門の設立を急いでいる企業や短期強化合宿的なプログラムの企画をもくろむ企業もある。今後、さらに間口は拡充していくであろう。なお、現今の料金相場は1時間500円~1万円と幅広いようだ。
 
 ネットで募集している個人事業主なんかもいる。こちらは、少しうまいゲーマーが小遣い稼ぎにやっているようにも映る。
 
 ちなみに筆者は、プロ、セミプロのミュージシャンをあまた見てきて、また自身で講師の経験もあるが、楽器講師界わいでもこれに非常によく似た構図があると感じる。また、危うさを覚えた。それは「怪しげな講師も多い」という点である。受講するなら、教えてくれる人に講師の素養があるかを見極めていかなければならない。
 
 まず、「ゲーム・楽器がうまい」と「教えるのがうまい」はイコールではなく、まったく別のものである。たしかに「ゲーム・楽器がうまい」ということは、できることが他の人より多いということであり、より多くのことや、より高次元のことを教えられるであろうポテンシャルを持っている。
 
 一方、「教えるのがうまい」に求められるのは、言語化の能力や生徒の吸収するツボを探りながらスキルを伸ばしていける洞察力やコミュニケーション能力である。また、上達するための練習を体系化している理屈っぽさもあればなお好ましい。
 
「ゲーム・楽器がうまい人」は感覚的にその“うまい”境地にたどり着いた可能性があるので、講師に求められる「教えるのがうまい」の素養を必ずしも備えているとは限らないのである。
 
 例えば、知人のドラム講師は教えるのがうまい。生徒が軒並み素晴らしく上達する。この人は自身でも音楽活動をしているが「教える」ということに真面目に向き合っていて、“講師”という仕事を決して自分の食いぶちのための片手間にやっているわけではない。
 
 当たりの講師を引くのは難しいかもしれないが、少なくとも自分の上達にあまり寄与してくれなさそうな講師は避けるべきである。口がうまくて調子もいいが、技術は素人をだませる程度で散々、という講師は特に避けたい。
 
 さらに、講師と生徒には相性の問題もある。その講師の言語化したものが生徒にピタリとハマればそれは相性がよく、ハマらなければ相性は悪い。自転車の乗り方を説明する場合に例えるなら、「倒れる前に漕げ」「バランスを取れ」「怖がるな」などのアドバイスがあったとして、講師がどれをチョイスして、生徒にはどれが刺さるか…。これには運の要素も強い。すなわち相性である。
 
 であるから、良い講師はより多くの生徒に理解されうる言語を持っている、ともいえるかもしれない。
 
 中年ゲーマーがコーチングを受講するなら、おそらく大半の場合はコーチは自分より年下になるはずである。年齢に関係なく年下にも師事する勇気と謙虚さは、同じ中年ゲーマーとして拍手を送りたく、ぜひ報われてほしいと願う。コーチは、楽器講師と同様、おそらく玉石混交だが、きちんと探せば自分に合うコーチが必ず見つかるはずである。
 
 ゲームはうまくなればさらに楽しい。ぜひ、さらなる楽しさの境地を目指して、筆者も同世代のゲーマーとともに歩んでいきたい次第である。