株価や通貨、債権は暴落する一方
エネルギーや鉱山資源、穀物の価格は上昇

 ウクライナ問題が「戦争」へ発展した場合、世界経済はどうなるのか。結論から言えば、金融市場に壊滅的なダメージを与えることになる。歴史的に、大規模な戦争が起きると株価は暴落した。

 1939年~41年までの各年、ニューヨークダウ工業株30種平均株価は2.92%、12.72%、15.38%下落した。また、53年に旧ソ連のスターリンが死去した際、ソ連の体制転換が進み、東欧など社会主義国の情勢が不安定化するとの懸念が急増して世界の株価が暴落した(スターリン・ショック)。

 今後のシナリオの一つとして、ロシアがウクライナに侵攻すれば、世界の株価は「暴力的に」売られる恐れがある。投資家は価格変動リスクの高い株式を売らなければならなくなり、状況によっては、新興国株式の中で主要な投資対象となってきた企業の価値が大きく下落するだろう。

 リスク回避の動きが急増することによって、世界の通貨市場も混乱する。ロシア・ルーヴルやウクライナのフリヴニャの価値は暴落するだろう。地理的に近いハンガリーなど東欧の通貨や、ユーロにも売り圧力が飛び火する可能性がある。

 債券市場では、債務残高が増加してきた新興国の政府や企業の債券の価格が下落する。状況によっては、急速な資金流出に直面して経済全体での資金繰りがつかなくなり、国際金融支援を要請する国が出るかもしれない。

 また、エネルギーや鉱山資源に加え、小麦など穀物の価格も上昇するだろう。それによって世界的な物価上昇圧力は一段と高まり、各国で企業の業績が悪化する。

 EUが難民問題に直面する可能性もある。戦争によって平和や法による秩序は崩れる。経済と社会の運営を支えてきた価値観は崩壊し、混乱が世界に波及する。そのインパクトは計り知れない。