関空の保税工場で
日本にいながら海外企業の機器を修理

「中小企業にとって海外に進出することは大変なことです。だから、日本にいながらにしてグローバル展開を狙いました」

 京西テクノス社長の臼井努(52歳)は、そう語ると自信のある笑みを浮かべた。

京西テクノス社長の臼井努(52歳)京西テクノス社長の臼井努

 同社は東京都多摩市に本社を置き、電子計測器や医療機器の修理・保守などを手掛けている。もともとは国内企業との取引が多かったが、2016年から海外企業向けの修理サービス「GRS(グローバルリペアサービス)」を始め、グローバル化に本腰を入れている。

 一般的には、日本のメーカーが輸出した精密機器が故障したとき、その場で直せない場合は日本の自社(または下請け)工場に戻して修理し、再び海外に送り返すのが定石だ。

 この場合、メーカーは海外企業に売ったはずの製品をわざわざ輸入してから再度輸出することになり、無駄な時間や関税が生じる。GRSはこうした悩みを解決するサービスだ。

 GRSでは、関西国際空港の保税工場(関税を課されずに、外国貨物の加工・修理ができる工場)に修理スペースを設け、専門部隊を配置。大手航空輸送会社と提携して、修理対象となる機器を海外から空輸し、その場で修理して海外の顧客に送り返している。

 保税工場は24時間運用のため、利用客を待たせることなく取りかかり、最短3日で送り返すことができる。優先的に対応する「エクスプレスサービス」なら24時間以内の修理も可能だ。もちろん、製造元のメーカーを問わず修理を受け付けている。

 利用客からすると、品質にばらつきのある現地のリペア事業者ではなく、日本品質のサービスを短時間・低コストで受けることができる。機器メーカーからすれば、自社の手を煩わせることなく顧客満足度を上げられる。貨物輸送会社にとっても、輸送サービスの付加価値を高められる。まさに、3社にとってウィン・ウィンである。

 こうした独自戦略が国内外で評価され、京西テクノスは21年度決算でグループ売上高が113億円となった。16年度実績が46億円なので、たった5年で2.5倍近くなったことになる。

 今では「修理・保守」のビジネスで評価を高める京西テクノスだが、もともとは大手メーカーの下請け製造会社にすぎなかった。

 そこから今に至るまで、どのような道のりをたどってきたのか。