居心地の良い空間にあふれた「栄光学園」のキャンパス普通教室と職員室、大聖堂・図書館を結ぶ交差点にある「ラーニングスペース」。生徒が自由に集い、学び、語り合う貴重なスペースだ

大学受験の、その先にあるものを

――1学年は180人ですね。

望月 1クラス45人で1学年4クラス。毎年クラス替えをしているので、生徒同士は皆、お互い名前を知っていますし、結束が強いと思います。

校舎を建て替えるとき、「もう1クラス増やせば、東大合格実績も増えるのでは」というお話もありました。ただ、そうするといろいろな意味で学校の質が変わってしまうので、そのままにしました。

――1学年200人を切るようですと、経営的には大変では。

望月 まず、プールが造れません。食堂も採算が取れないという理由で引き受け手がなく、お弁当やパンの販売だけになっていますが、メニューの拡充に向けての検討もしています。

――学校の規模で言うと、東京の武蔵と同じくらい。校地が広く、自然に恵まれたところも似ていますね。

望月 武蔵の校長先生とはある座談会でご一緒したことがありますが、学んでいく意欲を育てるために、考えること、発見することの楽しさを各授業で大切にしているところが共通しているように感じました。

――それでも、東大には卒業生の3人に1人前後が毎年合格していますね。

望月 「他者とともに、他者のために力を尽くす人であれ」というスクールモットーにもあるように、ここで学んだ自分の成果は社会に還元するものと、栄光生は心のどこかで思っているようです。そのこともあってか、医学部医学科に進む卒業生が若干多い。特に、横浜市立大では、“犬も歩けば栄光生に当たる”と言われるほどです(笑)。

 東大の合格者が多い年は、医学部に進む卒業生が少なかったりします。66期生でしたが、在学中に同期生が脳腫瘍で亡くなり、「彼の思いを継いで彼の分も生きていきたい」という気持ちが強くなったこともありました。

――進学実績を上げるために、何か取り組んでいることはありますか。

望月 高3を対象に、お盆休みの時期を除いて夏期講習を行っています。大学受験に照準を合わせた講座がほとんどですが、数日間にわたって行われる化学実験と物理実験の講座があり、時間的な制約があって普段の授業ではできない実験を、早朝から夜7時くらいまでかけて行っています。毎年十数名の参加があります。

 一方、生徒の特徴の変化を踏まえて、新しい学習指導要領の実施のタイミングで、文理分けのクラス編成を従来の高3からではなく、高2からにします。

 本校が他校に先駆けて、中高の6年間を発達段階に合わせて2年間ずつの初級・中級・上級段階に組み替えたのが30年ほど前ですが、これがとてもしっくりきました。

 初級段階(中1~中2)の学習指導では、自分から学ぼうとする意欲や力を育てるため、学びや発見の楽しさ面白さを体験してもらう工夫を各教科でしています。例えば生物の授業では、「ネバネバした部分のある植物を探してごらん」と、校地内の裏山(雑木林)に生徒たちを野放しにしたり、ある植物が群生していたらその理由を地形を見ながら推論してみる、といったことが行われています。

居心地の良い空間にあふれた「栄光学園」のキャンパス1:南棟の普通教室はベランダでつながっている 2:1クラス45人だが、自然光にあふれ、のびのびとした環境 3:開放的な廊下 4:職員室や理科・社会などの教室が入る北棟
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