発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
今回は、本書で紹介した「料理の原理原則」を使ったレシピを紹介します。
赤ワインによく合う「フライドポテト」レシピ
おいしいお酒は吞めていますか? なんだか世の中が慌ただしい、こんな時こそおいしいお酒を飲みたいもの。前回は白ワインに合うフライドポテトを紹介させていただきましたが、今回は「赤ワインに合う」ポテトをご紹介させていただきます。
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まずは男爵イモを厚さ1.5センチくらいにカットします。あまり厚みの均一さは気にしなくていいでしょう。薄くてパリっとしたのと厚くてホックリしたの、両方あっても素敵じゃないですか。皮も剥かなくて大丈夫、むしろ香りが出ておいしい。水に晒したり下味をつけたりも一切不要。とにかくイモを洗って切ればOKです。
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薄く薄力粉をはたいておきましょう。これはちょっとめんどいけど、やった方がうまいからしょうがない。神経質にならなくていいです。粉ふるいとかも別にいいし不均一でぜんぜんOK。なんとなく表面についてればそれでかまいません。フライドポテトなんですから、テキトーに作りましょう。
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低温の油にイモを放り込みます。油の温度は120度とか130度。140度までいくとちょっと高いかも。温度計がない方はこの写真くらいに調整されてください。まぁ、こんなもん雰囲気ですよ。僕も適当にやっています。このまま15分~20分ほど揚げてください。ワイングラスでも片手にのんびりやるのがオススメです。イモが揚がる匂いは最高のツマミですよ。
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その間にソースを作りましょう。赤ワインとぶつける料理なら濃厚で複雑な感じがすると良いですよね、発酵感や熟成感があると尚よい、スモーキーな香りなんかも欲しい…。しかし、もう酒は入ってしまいました、めんどくさいソースなんて作りたくない。そんな時にオススメなのがこのカツオケチャップ。見ての通り、カツオブシとケチャップを半々くらいに加えまして…。
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オリーブオイルを少々加え、フライパンで焼きこんでいきます。ナポリタン・スパゲティを食べたことがある人なら誰でもご存じの通り、ケチャップは焼きこむとうまい! カツオブシは、「スモーキーさ」「熟成感」「うまみ」あたりをまとめて演出してくれる魔法の食材です。そこにイモと相性抜群のケチャップ。これね、うまいんすよ。
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水分が減り過ぎたな、と思ったらお手元のグラスから赤ワインをちょっと入れるといいですね。今日は仕事が終わったので、計量カップで飲み始めています。おっさんがキッチンで作って食うこのライブ感をお伝えしたい。
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そうこうしているうちにイモもいい感じになりました。「低温で長時間揚げる」理由は、水分を抜いて甘味を強く出したいからです。大体の食材は水を抜くと味が強くなりますね。今回は赤ワイン仕様でソースがかなり強くなりました、イモにもホックリ甘く濃厚なおいしさが欲しいところです。
一度揚げ鍋から取り出して、油を切ってやるといいでしょう。よく見ると1個齧った形跡がありますが、ちゃんと味見しててえらいということで…。ここで味見しておいしければもう失敗しようがないですからね。
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ラストに190度くらいまで熱した油でもう一度揚げて、香ばしさを乗せます。ちょっと面倒ですが、これも「やった方が絶対うまい」のでしょうがない。イモにいい色が乗ったら仕上がりです。さっきの低温揚げと違ってちょっと目を離すと丸コゲになります、ご用心。
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いい感じですね。いい揚げ色が乗ったものから順番に取り出していきましょう。
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塩だけでもおいしいですが、僕のオススメはクミンで仕上げるスタイルです。オリエンタルな香りと酸のニュアンスが、赤ワインとソース、イモをまとめあげてくれます。
ところで、フライドポテトの味付けは「ボウルに入れて中華鍋みたいに振りながら塩を回す」工程がとても大事なのをご存じですか? 振りかけただけでは塩が入りません。地味ですが今回一番大事な「調理」はこの「塩を回す」部分だったりします。
他の部分は正直、もっと手を抜いても大丈夫と言えば大丈夫なんです。ただのケチャップでも、5分で揚げても、それなりにうまい。でも、この「塩を入れる」工程だけは手抜きダメ。ボウル1個洗う手間をかける価値は絶対にある。ここ一番大事。塩は全ての基本。
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出来上がりました! こんなのまずいはずがないですね。ケチャップの無反省にアメリカンな甘さが「俺はフライドポテトだ」と主張しています。こういう味、酒に合うよね。
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グラス片手に一手間かけただけの価値はある味ですよ。このサクサクホックリ感。
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もう限界だ! 呑むぞ!!!
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ガッツリとソースをディップして…。ポテトとソースだけでは重たくなるところを赤ワインで洗い流して、うまいうまい。これはうまい。グイングインいける。
なんだかんだボトル一本飲んでしまいましたね。ここで布団に入れば、それは完璧な夜の終わりです。明日もすっきりと目が覚め、仕事に入れる。でも、人は罪深い生き物です。「ちょっとウィスキーなんか吞みたいな」と、そりゃあ思いますよね。ここまで来てしまったんだ、ちゃんと呑んで終わらなきゃ酒に失礼だ、そんな気もしてくる。
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(次回予告↑)そんなわけで、次回はアメリカなら懲罰的損害賠償制度ですごい金額払わされるレベルまでフライドポテトを罪深くしてみましょう。人類はどこから来てどこへ行くのか、フライドポテトはどこから来て、どこまで罪深くなれるのか。行こうじゃないか、油と塩と炭水化物、そしてアルコールの導くままに。あ、ウィスキーはですね、香りの背徳的に甘~~いやつを用意しといてください。僕は最近台湾の“KAVALAN”ってやつが大変お気に入りです。
ポテトライフは続きますが、ライフは油断すると終わります。お酒と塩と油と炭水化物は楽しく適量を。僕は最近血液検査がオール正常でハシャいでるところなんです。たまにはいいですよね! たまにならね! たまにだからね!