相次ぐロシアボイコットや撤退
ロシアにとって最も痛手なのは?

 まず目に付くのが、グローバルブランドのロシアボイコットです。アップル、ナイキ、ディズニーがロシアでの製品の販売を相次いで休止しました。GM(ゼネラルモーターズ)はロシアでの自動車販売を中止し、フォードは合弁事業を解消します。

 経済制裁は一見、ロシアだけでなく仕掛けた側の西側諸国にも大きな影響がありそうに思えます。しかし、実際はそうではないというのが各国・各社のそろばん勘定でしょう。

 ロシアのGDPは世界経済の1.7%にすぎません。ちなみにウクライナは0.2%です。ロシアとのビジネスが止まっても、全体への影響は限定的。逆にアップルやディズニーにとってみれば、人道的制裁によってむしろ業績にはプラスの影響すらあるでしょう。

 ロシアにとって経済的打撃が大きいのは西側ブランドの撤収よりも、ロシアの基幹事業であるエネルギー事業での西側諸国の撤退です。

 石油大手のシェルは、ロシア産天然ガスをバルト海経由で輸送するパイプライン「ノルドストリーム2」から撤退し、開発会社は破産に追い込まれそうな状況です。シェルは日本も出資する「サハリン2」からも撤退。同時に「サハリン1」から、アメリカの石油会社エクソンも撤退を表明しています。開発に参画してきた日本企業にとっては、なんとも痛手です。

 一方でこれらの制裁によって、ロシアは確実に打撃をこうむります。すでにロシア通貨のルーブルは30%暴落しています。経済予測としては、今年のロシア経済は二けたのインフレと二けたのマイナス成長になることは確実のようです。

国民が疲弊しても
プーチン政権はびくともしない

 西側諸国が行う経済制裁手段として一番有効だとみられるのは、ロシアの銀行のSWIFT除外です。SWIFTとは国際的な銀行の決済インフラなのですが、SWIFTから排除されると海外と資金決済が事実上できなくなる。つまり、ロシア企業は海外企業と取引がしたくてもできなくなるのです。

 ロシアの生命線として、中国から陰の援助が得られるだろうという読みもありますよね。しかし、さすがにSWIFTが止まってしまうと、そううまくはいかないでしょう。中国からシベリア鉄道経由でいくら物資が届いたとしても、ロシアの海外との貿易は止まっています。国民の日常がひどい不況下の生活に変わることは避けられません。

 これが西側諸国なら、確実に政権交代が起きるはずの制裁ですが、そこはロシアです。国民がどんなに疲弊してもプーチン体制は続きそう。お互いが身を削る経済戦争でのチキンレースは、長引きそうという見方も濃厚です。