金融制裁「SWIFTからの除外」とは?
資産74兆円の6割が動かせなくなる!

 当初、強い金融制裁をためらっていたEU加盟国は、ここへ来てロシアに立ち向かう姿勢を明確にし、自由資本主義圏に属する諸国が結束した。その象徴が、ロシアの金融機関をSWIFTから除外することであり、中央銀行の外貨資産の差し押さえだ。その狙いは、ロシアの通貨の信用を失墜させ、ロシア経済に打撃を与えることだ。

 中央銀行の責務は、物価の安定を通した通貨価値の維持にある。そのために、中央銀行は世界の基軸通貨である米ドルに加えて、主要通貨であるユーロ、英ポンド、日本円などを保有する。

 近年では、中国経済の成長によって人民元を外貨準備資産として保有する国も増えているが、通貨の信任と流動性の点で米ドルが優位だ。

 米ドルなどの資産を中央銀行が自由に活用できなくなれば、必要に応じて為替市場に介入して自国通貨の為替レートを安定させることは困難になる。日米欧は団結して、ロシア中銀が通貨を防衛できないようにしようとした。

 2021年6月末時点で、ロシアの外貨準備資産の構成比はユーロが32%、金が22%、ドルが16%、人民元が13%、英ポンドが7%、日本円が6%などだ。ロシア大手銀行がSWIFTから排除されたことで、約74兆円の資産のうち6割程度が自由に動かせなくなる。

 ロシアは世界経済および金融システムから孤立し、ルーブルへの売り圧力はさらに強まる。外貨建て資産を差し押さえられたロシア中銀がルーブルを買い支えることは一段と難しくなり、「売りが売りを呼ぶ」ことになるだろう。

 ロシア政府は国内居住者が海外へ外貨送金するのを禁止した。それが示唆するのは、あらゆる手段を用いてルーブル売りを止めなければならないほど、ロシアの経済と金融システムが危機的な状況を迎えているとみられることだ。