蓄積するロシア国民の不満
クレジットカードも決済停止に

 ロシアでは通貨急落によって国民の不満が急速に高まっている。米欧がロシア中銀などへの金融制裁を発表した後、ロシアでは自分の財産を守るために外貨を手に入れようとする人がATMに長蛇の列をなした。「銀行取り付け騒ぎ(バンク・ラン)」というべき状況だ。

 米国クレジットカード大手のマスターカードやビザも、ロシアの複数の銀行との決済を停止する。もともと信頼性の低かったルーブルを手放し、少しでも多くの外貨を手に入れて財産を守ろうとする国民はさらに増えるだろう。ロシア経済全体で、信用創造が機能停止状態に陥っている。

 その結果、ロシアではモノ不足に拍車がかかり、急速にインフレが進行し、国民の生活環境が悪化する可能性が高い。ロシア政府や企業による海外債務の支払いが難しくなり、所得・雇用環境は急速に不安定化するだろう。

 ロシア中銀は国内の資金をかき集めて金融機関への流動性供給を続けようとするだろうが、対応の余地は限られていく。ロシア事業から撤退する海外企業も増えている。時間の経過とともにロシア全体で信用は収縮し、金融システム不安と経済の混乱が深刻化するだろう。

 その兆候として、欧州中央銀行(ECB)は、「ロシアの最大手金融機関、ズベルバンクの欧州部門が急激な預金の引き出しに見舞われ、破綻する可能性が高まっている」との声明を発表した。ズベルバンクの筆頭株主はロシア政府だ。

 ECBの声明は一連の金融・経済制裁によってプーチン政権の資金調達が絶たれ始めたことをロシア国民に知らしめることになった。ロシア経済は西側の金融システムに依存してきた部分が大きいのだ。

 ロシアと自由資本主義体制陣営が分断され、世界経済は「ブロック化」し始めた。それは、「反グローバル化」ともいえる大きな変化だ。世界経済の成長率は低下し、物価上昇圧力はこれまで以上に強まるだろう。