小宮山監督が「全員、辞めろ!」
全部員が震え上がったカミナリ

「4年生の緊張感が、伝わってなかったのか」

 100人を超える大所帯のチームビルディングの難しさなのだろう。

 大学スポーツでは各学年の意識に大まかな傾向があるという。1年生はがむしゃらに頑張るだけで時が過ぎる。2年生になると部の空気に慣れるものの、まだ下級生。これが3年生に上がると気持ちがたるみがちになる。上級生だが4年生ほどの焦りはない――というのだった。

 チームが一枚岩になることは容易ではない。この2年生たちは風通しのいい場所に出かけて、いわば積極的にリフレッシュしようとしたのだろう。だが、「いや、やめておこう」と声を上げる部員が1人でもいたなら――と監督は思うのだった。

 やるせなさは怒りに変わった。

 コロナ禍で春季は他の連盟が軒並みリーグ戦を中止する中、東京六大学のみが開催にこぎつけ、無事に閉幕した。リーグ6校が一枚岩になったのである。

「軽率な行動のせいで、もしコロナに感染したらどうなるのか。チームだけではなくリーグを揺るがす大事件になる可能性もあった。そういう可能性がわずかでもあることが分かっているはずなのに、出かけたことが許せない」

 一夜明けても、小宮山の怒りは収まらなかった。

「全員、辞めろ!」

 小宮山はグラウンドで言い放った。その剣幕に全部員が震え上がった。

 就任以来、一番のカミナリだ。春季リーグ戦の東大戦の落雷に劣らぬ大音声である。
 
 その翌日、当該の2年生全員が頭を丸め、涙を流しながら監督にその頭を下げた。