高校野球の甲子園や高校サッカー選手権、日本の学生スポーツにおいて高い人気を誇るトーナメント戦。数々のドラマチックなシーンを生んできた反面、限られた人でしかその舞台の当事者になれないという現実もあった。今、新しいスポーツのあり方として、小学5年生年代のサッカー全国リーグ「プレミアリーグU-11」が運用されている。前後半戦の従来の2ピリオド制ではなく、3ピリオド制で実施し、登録選手が必ず試合に出場するというルールだ。サッカー専用の人工芝グランドを所有し、イングランドのアーセナルFCの公式スクールとして活動していたクラブ「FC市川ガナーズ」代表の幸野健一氏は、同リーグの実行委員長だ。スポーツの捉え方を考える本連載第1回、第2回に続いて幸野氏に新しいスポーツのかたちについて聞いた。(取材・文/上沼祐樹)
勝利至上のトーナメント戦ではなく
全員出場のリーグ戦に見る可能性
私は全てのスポーツのリーグ戦化が必要だと思っています。サッカーに限らず、多くの学生スポーツでトーナメント戦が実施されています。ただこのシステムだと、一部の強いチームと上手い選手だけしか、年間を通して多くの経験ができないんですよね。それ以外の選手は、ほとんど試合経験を得られません。
たとえば、全国高校サッカー選手権の都道府県予選。1回戦で約半分ものチームが敗退して引退してしまいます。弱いチームに所属(進学)しただけで、選手は本番での経験を得る機会が少なくなってしまうのです。