後悔しない認知症#6Photo:PIXTA

認知症に備え、元気なうちに信頼できる家族に財産の管理・運用を託す「家族信託」。親族以外が選任されるケースが多く家族にとっては使い勝手の悪い成年後見人に代わり、一躍注目の的になっている。しかし、その新たな「認知症相続の切り札」も万能ではなく、間違った使い方をすれば大きな落とし穴にはまる恐れがあるという。特集『決定版 後悔しない「認知症」』(全25回)の#6では、家族信託で後悔しないために知っておきたいメリット、デメリットを詳細に解説する。(ダイヤモンド編集部 野村聖子、監修/司法書士法人NCP 司法書士・正木 博)

使い勝手の悪い成年後見制度に代わる
「認知症相続の切り札」の期待値は?

 認知症になると、「意思能力がない」とされ、一切の法律行為ができない。そのため、家族が認知症になった人の財産を動かす必要がある場合、家庭裁判所に申し立て、「成年後見人」を選任してもらう必要がある。しかし、相続対策を考える場合、家族にとって成年後見人は非常に使い勝手の悪い制度と言わざるを得ない(本特集#4『親の認知症で相続税「数千万円」の損も!遺言、成年後見人…“認知症×相続”リスク大全』参照)。そのため、にわかに注目を集めているのが「家族信託」という仕組みだ。

 インターネットで「家族信託」と検索すると、主に司法書士事務所による家族信託の売り文句や問い合わせフォームがあまたヒットする。また、ここ数年で書店の相続対策のコーナーにも、家族信託関連の書籍が飛躍的に増えた。

 しかし、家族信託は全ての家族にとってメリットがあるわけではなく、過度の期待は禁物であり、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあると専門家らは指摘する。