その激務の話ですが、労働基準法では使用者と労働者の代表が36協定を結べば例外的に月45時間の残業が許され、さらに例外の例外として業務量の大幅な増加に対して上限で月100時間まで(かつ2カ月以上の平均で80時間以内)の残業・休日出勤が許されるとされています。今回書類送検された事案の140時間はこの基準を超えるので、「よくない」という点については間違いないと思います。

 とはいえ、アクセンチュアはこの残業問題については業界内ではかなりきちんと取り組んでいたという評判を聞いています。そのあたりはこの記事の後半でお話しするとして、まず総論として、なぜコンサル業界で過重労働が発生するのかについてまとめてみましょう。

 過重労働は、命に係わる問題だと認識されています。過労死ラインと言われるのが月80時間を超える時間外労働で、健康障害を発症した人はそのような状況が長く続き、発症の直前には時間外労働が月100時間を超えていたという例が多いようです。

人気のコンサル業界で残業が発生する
三つの理由

 それでは、なぜコンサル業界で残業が発生するのか? 三つのタイプの理由から、その原因と対策を考えてみたいと思います。

その三つとは、
(1)取り組む課題の難易度が高い
(2)自身の能力が低い
(3)組織の能力が低い、ないしは上司の能力が低い
です。

 1番目の理由は職種柄、仕方ない側面もあります。というのも、そもそも大企業が多額の報酬を支払ってコンサルに依頼をする問題は、どんなものであれ簡単なものではないケースが大半だからです。ノウハウがあるとはいえ、毎回頭をひねって打開策を考えに考え抜く仕事ばかり。時間がかかるのは当然です。

 2番目の理由ですが、実はほとんどのコンサルタントが「自分の能力の低さ」を認識しています。これは、トップアスリートの心境に似ています。その道のプロであればプロであるほど、要求される能力の高みを理解しています。同時に、自分がそこに到達するためにはまだ距離があることを、痛いほど自覚しているのです。

 ちなみに、それを認識していない自信満々のコンサルもいますが、自分を客観視できない人は比較的短時間で業界から淘汰される傾向にあるようです。

 それでこれはコンサル業界共通の課題になるのですが、この二つの理由から「残業せずに早く帰れ」と命令しても、仕事を続けたいと考えるコンサルは結構多いのです。職人気質というと理解しやすいかもしれませんが、今できている案では不十分であることがわかっていて、仕事にもっと時間をかけたいのです。

 コンサルの場合、能力に応じてポジションが与えられ昇給する格差が大きいことから、なんとしても実力を上げて認められ、早く上に行きたいという競争心も大きいものです。

 過重労働の問題が叫ばれるようになって以降、コンサル会社は労働時間を厳しく把握するようにしています。すると、当然のように「今の上司は若い頃に無限大の残業をして力をつけた。今になって若い社員に時間制限を課して成長の機会を奪うのは、フェアではない」という不満が、若くて上昇志向の強い社員から噴出したりもします。

 実際、そういう社員は帰宅しても夜遅くまで勉強したり調べものをしたりします。だから、会社の管理できない場所で健康に負荷がかかっていることも多いのです。