アメリカ財務省が作成した制裁対象者のリストには、約200人の政府関係者(プーチン大統領から官僚までが含まれる)と19人の国営企業トップ、そして96人のオリガルヒが含まれていた。

 その中には、2003年にイングランド・プレミアリーグのサッカークラブ「チェルシーFC」を買収し、ポケットマネーで多くの有名選手を獲得し、クラブを強豪の一つに押し上げた実業家のロマン・アブラモビッチ氏の名前も記載されていた。

 プーチン大統領と近い関係にあるとされる同氏だが、3日にはチェルシーFCの経営権を売却する意向を表明。売却の純益は新たに創設する財団に全て寄付し、ウクライナにおける戦争の犠牲者を支援するために使うのだという。

 一部のオリガルヒは1991年のソ連崩壊前から大金を稼いでいたが、当時は大富豪になるだけのビジネスを展開していたわけではなく、規制が厳しかった西側諸国の製品を輸入し(その多くは密輸)、コンピューターなどは一般人の稼ぎでは購入できない金額で販売していたという。

 だが、ソ連崩壊後に発足したロシアのエリツィン政権でオリガルヒの力は一気に増大。オリガルヒやマフィアがロシアの政治に頻繁に絡んでくるようになった。ソ連崩壊後のロシアにおける政治環境が混沌としていたことも理由ではあるが、カネ(賄賂)で物事が決まる傾向がより強くなった時代でもあった。

 1998年に財政危機に見舞われたロシアでは、前年に発生したアジア通貨危機とのダブルパンチで、デフォルトが発生した。この際に巨額の財産を失ったオリガルヒもいたが、財政危機を乗り越えたオリガルヒや新たに生まれたオリガルヒは、これまで以上に影響力を持つようになっていたのだ。

 順風満帆に見えたオリガルヒだが、2000年に大きな転換期を迎える。ゲームチェンジャーとなったのは、同年5月に第2代ロシア大統領に就任したウラジミール・プーチンであった。