「ウクライナでも、2014年、親ロシア派だったヤヌコビッチ政権が崩壊し、ロシアがクリミア半島へ侵攻したときにSNSが活用された前例があります。政権崩壊に向けた反政府運動『ユーロマイダン』の様子は、You Tubeで全世界にネット中継されていました」

 社会的な大事件の際にSNSで情報が拡散されたことは、日本でもある。2011年の東日本大震災では、一般のユーザーがスマートフォンで撮影した被災地の動画がSNSに大量に投稿された。SNSが社会的な出来事が起きたときに活用される現象は、10年以上前から始まっていたのだ。

 ただし、平氏によれば、今回のウクライナ侵攻は、2014年当時とは、SNSのユーザー数が決定的に異なるという。

「2014年初めの段階では、世界最大のソーシャルメディアであるFacebookの月間アクティブユーザー数は約13億人。それが2021年末では29億人と、8年近くで倍以上に増加し、今や世界人口の1/3以上に当たる人がFacebookに登録しています。急速に成長するSNSはもはや社会のインフラとしての機能を持ち、拡散力が増した分、SNSが有事などで担う役割が大きくなったのは明らかです」

 事実、今回の戦争ではSNSが使われる場面が増えているといえるだろう。

「ウクライナの住民は、情報収集や現場の動画を世界に向けて発信するためにSNSを有効に使っています。また、ウクライナのゼレンスキー大統領自身もInstagram、Facebook、Twitterを活用して国際世論に協力を求め、その声が広く受け止められています。ロシアよりも軍事力が劣るウクライナ政権が、SNSの活用により国際世論の共感をつかめているのは特徴的です」

 一方、ロシア側は言論統制を強化しており、軍についての「偽情報」を広めた場合、最長で懲役15年を科す法律を発効させている。言うまでもなく、ロシアに都合の悪い報道や市民の声を封じる狙いで、この法改正を受けて、TikTokはロシア国内での動画投稿サービスの停止を決定している。