SNSに投稿する
フェイクニュースの仕掛け人

 SNSで拡散される情報や動画は、必ずしも事実とは限らない。今回の戦争で懸念されているのは、フェイクニュースの拡散だ。

「ウクライナ侵攻は、従来の武力行使に加え、SNSでのフェイクニュースやサイバー攻撃を戦略的に連携させる、いわゆる“ハイブリッド戦”です。アメリカの調査会社『ミトスラボ』によれば、昨年秋から緊張が高まったロシア・ウクライナ間の状況と呼応するように、Twitter上における親ロシアのフェイクニュースが急増しました」

 この戦争で重要な役目を負っているフェイクニュース。そもそも誰が、何の目的で作り出しているのか。

「中核を担うのは、政治的な目的を持ってフェイクニュースを流す国家や政党などの組織です。敵国の混乱や戦意喪失、政敵へのネガティブキャンペーンが狙いになります。その場合、政権・政党が民間業者に委託して、偽のアカウントがつくられ、そこからフェイクニュースが投稿されることもあります」

 オックスフォード大学の研究チームによると、フェイクニュースをプロパガンダの手段として展開している国は、2020年時点で81カ国存在する。これは、2019年時点では70カ国で、増加傾向にあるそうだ。さらに、民間企業によるフェイクニュース拡散などの情報操作は、2020年に48カ国で行われており、この数も、前年の25カ国から、ほぼ倍増している。

「プロパガンダ目的のフェイクニュースは近年急速に広がりをみせています。特に、フェイクニュースをプロパガンダの手段として活用することで知られるのがロシアです。2016年のアメリカ大統領選で、サイバー攻撃とフェイクニュースを連携させ、民主党候補だったクリントン陣営へのネガティブキャンペーンを行ったとして、司法省が関係者を起訴しています」

 平氏によると、フェイクニュースに携わるのは、プロパガンダ目的のほか、収益化をもくろむビジネス目的のグループ、面白半分で便乗する人などが考えられるという。さまざまな動機を持つ人たちによって、フェイクニュースはつくられ、世界に混乱を招いているのだ。