コロナ禍で鉄道利用者も減ったが…
1位は東急

 1位は、傘下に東急電鉄を持つ東急で、業績進捗率は301.8%だった。純利益の通期予想が100億円なのに対して、第3四半期の時点で301億円を計上している。ただ、上方修正をせずに第3四半期時点で業績進捗率がこの数値に達しているのは異常事態だ。

 そもそも上場企業は、直近の業績予想の値が、そのとき公表している予想の値より30%以上(純利益の場合)の増減があった場合、業績を上方・下方修正しなくてはいけないからだ。

 東急が異常事態を放置せざるを得ない理由の一つは、新型コロナウイルス禍の収束が見通せないことだ。

 一時はワクチン接種が進み、昨年10月に緊急事態宣言が解除されたことなどを背景に、経営環境に改善の兆しが見られた。東急電鉄の22年1月の利用者数は19年度比で30%程度増加しているという。しかし、オミクロン株の感染拡大で全国各地でまん延防止等重点措置が再度発出されたことにより、再び東急の各種事業に影響が出ている。

 純利益の進捗率が301.8%という異常事態に対して、東急は決算資料の中で次のように説明している。

「構造改革の取り組みやコロナ感染拡大の長期化による影響が大きい事業(交通、百貨店、ホテル等)での損失発生リスクを考慮し、最終利益は(上方修正せずに)据え置く」

 このように、東急が本当に業績の上方修正を実現できるかどうかは、コロナ禍の動向次第という側面も大きい。

 なお、東急は23年3月に鉄道の運賃の値上げを行う予定だ(一部路線や通学定期は据え置き)。改定率は12.9%で、初乗り運賃は10円程度の値上げとなる。東急はこの値上げで10%前後の増収を見込んでいる。

 運賃改定の理由について、東急は安全性・利便性向上に伴う費用(人件費、修繕費、保守経費など)が増大する一方で、コロナ禍によって収入が大打撃を受けている点を挙げている。テレワークなどの普及によって定期券の減収率が関東大手私鉄の中で最大だと明かしている。さらに、「緊急事態宣言解除後の2021年10月以降もコロナ禍前と比較して約3割減が継続しており、今後の需要回復は見通せない状況」と想定している。厳しい経営が続きそうだ。

 なお、今回のランキングでは東急と同じように、業績進捗率が100%を超えているのに、業績を上方修正していない企業が多い。東急と同様に、第4四半期で大赤字を計上するような不測の事態に備えて、保守的に純利益の予想を据え置いている上位企業が多い。

 では、ランキングの紹介に戻ろう。2位は、京王電鉄で、進捗率は167.3%だった。純利益の通期予想が18億円なのに対して、第3四半期の時点で30億円を計上している。

 鉄道事業では、まだ新型コロナウイルス感染拡大前に比べて鉄道輸送人員が減少している。しかし、21年4~5月を中心に前年同期と比べて状況は改善し、旅客運輸収入が11.6%増となった。また、バス事業およびタクシー業においても、増収となった。しかし、東急と同じようにホテル業や不動産業も展開していて苦しい面もある。

 3位は名古屋鉄道で、進捗率は164.0%だった。純利益の通期予想が50億円なのに対して、第3四半期の時点で82億円を計上している。

 同社は名古屋と愛知県下の主要都市および岐阜市を結ぶ輸送をメインに、1日当たり約100万人が利用する中部圏の交通ネットワークを築いている。そのほか、バス、タクシー、トラック、海運事業も展開しているが、営業収益は前第3四半期比で増加している。

 ランキングの完全版では、6位以下の全33社を掲載している。ぜひチェックしてみてほしい。

(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)

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