李哲煕政務首席秘書官は「文大統領が大統領室の移転委に否定的だ。会談の席でやむを得ず反対の立場を明らかにするしかない」と述べると、張済元秘書室長は「尹氏自ら竜山行きを公表したが、文大統領が会談で敢えて反対の立場を表明するというのは理解し難い。再考してほしい」と反論、溝は埋められなかった。

 このため、大統領室の移転強行に反発する文在寅氏から尹錫悦氏への政権引き継ぎにも支障を来しかねない事態となっている。

 この問題は次期政権にとって最初の大きな関門であり、政権発足後の国会との対立関係を助長しかねない問題となっているため、どのような結末を迎えるのか注目されている。

大統領執務室を青瓦台から
光化門に移転する理由

 尹錫悦氏は大統領選挙期間中の2月13日、野党「国民の力」の「10大選挙公約」を中央選挙管理委員会に提出。「既存の大統領室は官庁の上に君臨して権力を独占したり、国家的危機にまともに対処できず未来準備をおろそかにしている」として大統領室改革構想を表明した。同氏はさらに「現在の青瓦台の構造は王朝時代の宮廷の縮小版で、権威主義と業務非効率を招く。新しい空間で、新しい方式の国政運営が必要だ」と強調した。

 そして大統領執務室と大統領傘下の主要部署は任期開始前の段階で移転を完了するとし、新しい大統領執務室は光化門にある政府庁舎を活用するとした。

 尹錫悦氏は3月20日、自ら45分間、大統領執務室を光化門の政府庁舎ではなく竜山移転に必要性を説明した。そして大統領就任日である5月10日には、新たな執務室で勤務を開始するとした。しかし、30分予定されていた質疑応答は割愛し、出席した記者一人一人と握手をしただけであった。

 こうしたやりとりに関し、朝鮮日報は、大統領執務室の移転に対する準備不足や一方通行式の決定に対する指摘は避けられないと報じている。

 大統領執務室を光化門ではなく竜山とするのは、大統領が移動する際に警護目的で出される電波妨害が企業や市民の活動の支障になることや、光化門の外交部庁舎に「地下バンカー」と呼ばれる危機管理状況室がないことなど、光化門の欠陥が明らかになったためだとされる。

 国防部であれば、通信のジャミング問題、警護問題から解放され、国防部の地下バンカーやヘリポートも使用できる。新しい執務室の1階にはホワイトハウスのように記者室とブリーフィングルームを設置して、国民との意思疎通を進めていく考えだという。

 また、尹錫悦氏は在韓米軍が返還中の竜山基地の敷地にホワイトハウスのような公園を造成できることにも魅力を感じたという。