高級食パン店に激震
ブームに翳りが生まれた背景

 ところが、最近はこの高級生食パンがおいしい「理由」まで広まってきました。お店によって違いはあるのですが、あるお店の商品の場合、使っている小麦は他のパン屋さんと同じアメリカからの輸入小麦。ではなぜおいしいのかというと、バターとマーガリン、砂糖をたっぷり使うからなのです。

 砂糖はイースト菌の発酵を促しますから、たくさん入れればパンはふわふわになる。当然甘い。さらに、脂肪分がたくさん入っているからおいしい。ですが、高カロリーです。

 そして、普通の食パンのように中種法ではなくストレート法という発酵時間が短くて済む製法で焼き上げます。この製法で作ると普通の食パンのようには日持ちしないのですが、当日はおいしい。発酵時間が短いので生地を置いておく場所を取らないから、小さなお店に向いています。

 要するに、ブリオッシュと高級生食パンの作り方の方向性は同じ。だから、お菓子のように甘くておいしいのです。これが日本でブームになった。そして最近はそのブームに翳(かげ)りが出ている様子です。

 この高級食パン業態が、従来のパン屋さんとは違う奇抜でおもしろい名前が付いた食パン専門店として広まったのは、ブランド戦略としてはわかりやすい方法でした。お店の名前だけ見れば、「ここは普通のパン屋さんではない」ことがわかります。売っている商品も普通のパン屋さんのようにいろいろなパンが置いてあるのではなく、高級食パンしか置いていない。だから、「ここは高級食パンの専門店だ」ということが消費者にすぐにわかる。

 ところが今、ツイッターなどで話題になっているのは、全国で変な名前の高級食パン店が次々と閉店しているというニュースです。10年ぐらい前に全国に一斉に白いたい焼き屋さんが広がったときの状況と、よく似ている気がします。

 どちらも作り方さえわかれば開業しやすく、過当競争に陥りやすい。1斤1000円の食パンを手に届くぜいたくとして買う顧客数よりもお店の数が多くなれば、当然、淘汰がおきるようになります。