なお、この充電所の少なさは、たとえば東京と都市構造がよく似ている上海と比較してみるとより際立ちます。テスラの公式サイトから、世界中のスーパーチャージャー(テスラ専用充電所)の場所を調べることができますが、東京は半径10km圏に7カ所、上海は36カ所と、数の違いは圧倒的です。

 鶏が先か、卵が先か、という議論はありますが、日本にもテスラの充電所がもう少し増えれば、と願わざるを得ません。なお、日本政府は2021年の成長戦略会議において「2030年までにEV向け急速充電器を3万基設置する」との目標を掲げており、インフラ面の整備が進むことを大変期待しています。

 テスラに乗り始めて3年目あたりから、何度か故障がありました。はじめての故障は、夏の家族旅行の最中でした。38度の炎天下、中央道の記録的な大渋滞の中、クーラーが故障したのです。幸いなことに、すぐ近くに高速の出口があったので、家族を最寄りの駅まで送って新幹線で帰ってもらい、自分は現地のシティホテルで一晩を明かしたのち、翌朝5時のまだ涼しい時間帯に都内に戻りました。もしあの時、近くに高速の出口が無ければどうなっていたのだろう、立ち往生しただろうか、と考えると冷や汗ものです。

 さらに4年目に入ったころから、電気系統関連の故障が立て続けに起こりました。1度目はすぐに直りましたが、2度目は交換部品の行き違いがあったり、本国から取り寄せる必要があったりと、2ヵ月ほど修理に預けっぱなしとなり、結局直らないままリース期間が終了。大変残念ながらテスラを手放すこととなりました。このようなメンテナンスサービスや、電気系統のトラブル対応は正直まだまだなのかなと感じることが多かったです。

 また、ソフトウェアアップデートがあった際に、2017年式以前のテスラ車にバグが出て、フロントやハンドル奥にあるインパネがブラックアウトするということがありました。この時はじめて、「このクルマが万が一ハッキングされたらどうなってしまうのだろう? 制御不能になってしまうのだろうか?」 というリスクを自分事として感じました。

 これからのモビリティ領域は、今までにも増して、ネットワークセキュリティを含めた品質保証が重要になるだろうな、と改めて感じた次第でした。

手放した今も、テスラは応援したい企業

 以上が、私がテスラと過ごした4年間の経験です。最終的には愛用したテスラを手放したわけですが、このテスラとの出会いが、僕や僕の家族にとって「カーボンニュートラル」や「地球温暖化問題」を自分事として考える大きなきっかけとなりましたし、テスラが掲げる企業理念「To accelerate the world's transition to sustainable energy(持続可能なエネルギーの利用を加速化させる)」には大変感化されました。なので、これからも個人的に応援したい企業であることは間違いありません。

 さて、海外ではテスラが仕掛け人となってEV化の流れが急速に進み、従来型の自動車企業だけでなく、新興EVメーカー、エネルギー会社や運送会社、ひいては小売業などの商業施設までも一気に参入しています。次回は、EV化をめぐる海外企業の動き、そして日本企業の対応を紹介したいと思います。