人民主権の萌芽

 この結果、前王朝の最後の君主は、必要以上に暴君として記録されるようになりました。

 なぜなら明君であれば、新王朝の正統性が保てなくなるからです。

 だから、新王朝の創始者は明君となるのです。

 商の帝辛(紂王(ちゅうおう))と周の文王・武王、隋の煬帝(ようだい)と唐の太宗(たいそう)などがその典型です。

 天命という抽象的な概念を除去して考えてみれば、実際に下剋上(革命)を実行するのは、農民であり民衆です。

 孟子の思想は、人民主権の萌芽ではなかったか、とも考えられます。

 当時としては過激極まりない思想でした。

 ちなみに、日本の天皇家に姓がないのは、姓がなければそもそも易姓革命が起こりえないと考えたからだといわれています。

『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。

 僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。

(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)