世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU(立命館アジア太平洋大学)学長。世界史を背骨に日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説した『哲学と宗教全史』がついに13万部を突破。「ビジネス書大賞2020」特別賞(ビジネス教養部門)を受賞。発売2年経っても売れ続けるロングセラーとなっている。
◎宮部みゆき氏(小説家)が「本書を読まなくても単位を落とすことはありませんが、よりよく生きるために必要な大切なものを落とす可能性はあります」
◎池谷裕二氏(脳研究者・東京大学教授)が「初心者でも知の大都市で路頭に迷わないよう、周到にデザインされ、読者を思索の快楽へと誘う。世界でも選ばれた人にしか書けない稀有な本」
◎なかにし礼氏(直木賞作家・作詞家)が「読み終わったら、西洋と東洋の哲学と宗教の大河を怒濤とともに下ったような快い疲労感が残る。世界に初めて登場した名著である」
◎大手書店員が「百年残る王道の一冊」と評した究極の一冊
だがこの本、A5判ハードカバー、468ページ、2400円+税という近年稀に見るスケールの本で、巷では「鈍器本」といわれている。“現代の知の巨人”に、本書を抜粋しながら、哲学と宗教のツボについて語ってもらおう。
孔子の説いた礼の思想
孔子の説いた礼の思想を整理しておきます。
「周初、武王と成王、そして周公旦がいた時代は聖人政治が存在していた。君主は君主らしく、閣僚は閣僚らしく、家臣は家臣らしく、そして農民は農民らしく、それぞれに互いを認めていた。人と人の間では礼儀作法が守られ、社会の中には人々の行動やその評価についての拠るべき規範があって、平和が実現していた」
孔子はそのように考え、その時代の精神に戻れと主張しました。
それぞれの身分の人々が心豊かに生きるためには、社会の秩序を保つための生活規範、すなわち礼が大切なのであると。
また、周初の時代を尊重せよということは、祖先崇拝にもつながります。
それは家族においては、代々の親を大切にすることであると、そのことも孔子は強調しました。
孔子が訴えた「仁愛」とは?
孔子は理想的な社会を実現するために、「礼」の実践を説きましたが、同時にもう一つの理念も主張しています。
それは「仁」です。
「仁」とは、自分の欲望を克服し、他人への思いやりを大切にする心です。
慈(いつく)しみの心であり、人道主義や愛と置き換えることも可能です。
儒教の世界では「仁愛」と呼ばれるようになります。
孔子は、周初の社会があれほどまでに平穏であったのは(事実は決してそうではありませんでしたが)、為政者たちが深い仁の心に満ちていたからだと考えたのです。
孔子は、このような礼と仁の思想をバックボーンとする政治を、魯以外の国で実現させようと思ったのですが、孔子を政治的顧問として重用する諸侯はどこにもいませんでした。
孔子の理想とする政治の原点は、祖先崇拝につながる礼の思想と、身分制度を認めたうえでの人道主義であり人間愛です。
それは決して反体制的な思想ではありませんでした。
しかし、力が正義であった時代には、現実離れしていたことは疑いを入れません。
ですから礼と仁を説く孔子に対して、諸侯たちは次のように思ったのではないでしょうか。
「俺も人間愛は大切だと思うし、部下も農民も愛している。しかし、隣国(おとなり)が喧嘩を仕掛けてくるのでね。身に降りかかる火の粉は、払わなくちゃならない。大昔の周王は立派だったかもしれないが、お手本にはできないね。自分が滅ぼされてしまうから」
結局、孔子は十数年の諸国遍歴の後、魯に戻りました。
そして弟子たちを教えることや古書の整理を続けることで生涯を終えました。
この本では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を出没年つき系図で紹介しました。
僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。
(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)
『哲学と宗教全史』では、古代ギリシャから現代まで、100点以上の哲学者・宗教家の肖像画(出没年付き)がイキイキと躍動しています。3000年の本物の教養が一冊凝縮されていますので、ぜひチェックしてみてください。
出口治明(でぐち・はるあき)
立命館アジア太平洋大学(APU)学長
1948年、三重県美杉村生まれ。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴いライフネット生命保険株式会社に社名を変更。2012年、上場。社長、会長を10年務めた後、2018年より現職。訪れた世界の都市は1200以上、読んだ本は1万冊超。歴史への造詣が深いことから、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では世界史の講義を受け持った。おもな著書に『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『仕事に効く教養としての「世界史」I・II』(祥伝社)、『全世界史(上)(下)』『「働き方」の教科書』(以上、新潮社)、『人生を面白くする 本物の教養』(幻冬舎新書)、『人類5000年史I・II』(ちくま新書)、『0から学ぶ「日本史」講義 古代篇、中世篇』(文藝春秋)など多数。
【著者からのメッセージ】
なぜ、今、「哲学と宗教」を
同時に学ぶ必要があるのか?
現代の知の巨人・出口治明が語る
はじめまして。出口治明です。
今回、『哲学と宗教全史』を出版しました。
おかげさまで第16刷・15万部を突破しました。
ほんとうにありがとうございます。
僕はいくつかの偶然が重なって、還暦でライフネット生命というベンチャー企業を開業しました。
個人がゼロから立ち上げた独立系生保は戦後初のことでした。
そのときに一番深く考えたのは、そもそも人の生死に関わる生命保険会社を新設するとはどういうことかという根源的な問題でした。
たどり着いた結論は「生命保険料を半分にして、安心して赤ちゃんを産み育てることができる社会を創りたい」というものでした。
そして、生命保険料を半分にするためにはインターネットを使うしかないということになり、世界初のインターネット生保が誕生したのです。
生保に関わる知見や技術的なノウハウなどではなく、人間の生死や種としての存続に関わる哲学的、宗教的な考察がむしろ役に立ったのです。
古希を迎えた僕は、また不思議なことにいくつかの偶然が重なって、日本では初の学長国際公募により推挙されてAPU(立命館アジア太平洋大学)の学長に就任しました。
APUは学生6000名のうち、半数が92の国や地域からきている留学生で、いわば「若者の国連」であり「小さな地球」のような場所です。
もちろん宗教もさまざまです。
APUにいると、世界の多様性を身に沁みて感じます。
生まれ育った社会環境が人の意識を形づくるという意味で、クロード・レヴィ=ストロースの考えたことが本当によくわかります。
僕は人生の節目節目において哲学や宗教に関わる知見にずいぶんと助けられてきた感じがします。
そうであれば、哲学や宗教の大きな流れを理解することは、間違いなくビジネスに役立つと思うのです。
神という概念が生まれたのは、約1万2000年前のドメスティケーションの時代(狩猟・採集社会から定住農耕・牧畜社会への転換)だと考えられています。
それ以来、人間の脳の進化はないようです。
そしてBC1000年前後にはペルシャの地に最古の宗教家ゾロアスターが生まれ、BC624年頃にはギリシャの地に最古の哲学者タレスが生まれました。
それから2500年を超える長い時間の中で数多の宗教家や哲学者が登場しました。
本書では、可能な限りそれらの宗教家や哲学者の肖像を載せるように努めました。
それは彼らの肖像を通して、それぞれの時代環境の中で彼らがどのように思い悩み、どのように生きぬいたかを読者の皆さんに感じ取ってほしいと考えたからに他なりません。
ソクラテスもプラトンもデカルトも、ブッダや孔子も皆さんの隣人なのです。
同じように血の通った人間なのです。
ぜひ彼らの生き様を皆さんのビジネスに活かしてほしいと思います。
本書では世界を丸ごと把握し、苦しんでいる世界中の人々を丸ごと救おうとした偉大な先達たちの思想や事績を、丸ごと皆さんに紹介します。
皆さんが世界を丸ごと理解するときの参考になればこれほど嬉しいことはありません。
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【第1位】【出口治明学長】日本一賢い天皇と日本一賢い部下の最強コンビが救った日本の窮地
【第2位】【出口治明】日本は鎖国ができて中国は鎖国ができなかった理由
【第3位】なぜ、仏教は「538年」に伝来したのか?
【第4位】日本人が知らない! 世界最古の宗教「ゾロアスター教」がその後の宗教に残した影響
【第5位】「この本は100年残るから安っぽい本にしちゃダメ!」書店員が編集者に断言した理由
【15万部突破! 大手書店でランキング1位!9/7・10/14「日経新聞」、11/3「朝日新聞」、11/8「日経MJ」、「サンデー毎日11.24号&12/1号」、12/2「読売新聞 夕刊」、12/8「読売新聞」、12/20「北海道新聞」、12/21「中国新聞」「京都新聞」「神戸新聞」、12/23「中日新聞」、12/28「静岡新聞」次々掲載!】
【“サンデー毎日”で「なかにし礼」氏、“YouTube”で「中田敦彦」氏、“Twitter”で「水上颯」氏、“HONZ”で仲野徹氏、堀内勉氏、刀根明日香氏、古幡瑞穂氏が次々紹介!】
【『致知 19年11月号』にて「百点以上の肖像画が掲載されている他、カラーの人物相関図がつくなど、理解しやすい工夫が至る所に施されているのも魅力の一つ」と書評掲載!】
【『週刊朝日』10/8発売号「書いた人」にも「手ごわそうな題名と厚さだが、
465ページをするすると読み終えてしまった」(ライター・仲宇佐ゆり氏)と書評掲載!】
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<目次>
☆はじめに──なぜ、今、哲学と宗教なのか?
☆第1章──宗教が誕生するまで
☆第2章──世界最古のゾロアスター教がその後の宗教に残したこと
☆第3章──哲学の誕生、それは“知の爆発”から始まった
☆第4章──ソクラテス、プラトン、アリストテレス
☆第5章──孔子、墨子、ブッダ、マハーヴィーラ
☆第6章(1)──ヘレニズム時代にギリシャの哲学や宗教はどのような変化を遂げたか
☆第6章(2)──ヘレニズム時代に中国では諸子百家の全盛期が訪れた
☆第6章(3)──ヘレニズム時代に旧約聖書が完成して、ユダヤ教が始まった
☆第6章(4)──ギリシャ王が仏教徒になった? ヘレニズム時代を象徴する『ミリンダ王の問い』
☆第7章──キリスト教と大乗仏教の誕生とその展開
☆第8章(1)──イスラーム教とは? その誕生・発展・挫折の歴史
☆第8章(2)──イスラーム教にはギリシャ哲学を継承し発展させた歴史がある
☆第8章(3)──イスラーム神学とトマス・アクィナスのキリスト教神学との関係
☆第8章(4)──仏教と儒教の変貌
☆第9章──ルネサンスと宗教改革を経て哲学は近代の合理性の世界へ
☆第10章──近代から現代へ。世界史の大きな転換期に登場した哲学者たち
☆第11章──19世紀の終わり、哲学の新潮流をヘーゲルの「3人の子ども」が形成した
☆第12章──20世紀の思想界に波紋の石を投げ込んだ5人
☆おわりに